でらうみゃ~でかなわんわ(18)

噂のにゃごやモーニング その8 「Cafe de Flime」

 文化遺産とも云うべき駅前喫茶

その店は名古屋市地下鉄東山線千種駅から歩いて数分の場所に在った…ってね、ボクは常にクルマで移動するので実際は近くの三井リパークに停めてテクテク歩いて行ったんだけどさ。
それにしても庶民の文化遺産とでも云ったらいいのだろうか、ニッポンが高度経済成長期に今度こそ本気で欧米諸国に近づきたくて、飲食業もそのスタイルを大きく変化させた。そんな昭和の色とカタチと香りが色濃く残ったお店なのね。

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MINOLTA  M-ROKKOR 2/40  @ SONY α7

自動ドアが開き中に入ると左側には通りに面する窓へ向かうカウンター席、右側に四人掛けのテーブル席がひとつ、そして衝立を隔てて奥にいくつかのボックス席。二階席もあるようだけど、そちらを図々しく見るわけにもゆかないのでどんな様子かは未確認だ。
入店したのは開店時刻をかなり過ぎた7:40ころだったかな、先客は奥のボックス席に男性が一人だけで静かにコーヒーを飲んでいた。ボクはちょっと戸惑いどの席を利用したらよいのか判断できなかったのだけれども、対応してくれたのはかなりご高齢のお爺さんで、その笑顔と仕草が「どうぞお好きな席へどうぞ」と語っていた。
ボクは入り口に近い四人掛けテーブル席に着席し、さてメニューは…と探したけれど無いのである。どうやらこのお店は店舗前面の窓ガラスに貼られたものがメニュー表となっているらしい。
(多分ボクと同年齢くらいの)店主らしき男性がヒヤタン(冷水の入ったコップで喫茶業界用語)とオシボリを置きつつ注文伺いに来た。「ブレンドのホットで」と言いかけると「モーニングですね」と仰るので「そうです」と答えただけだった。
少しの間待っていると先ほどのお爺さんがシェル皿に茹で玉子と塩ボトルを乗せたものを持ってきてくれた。うっわ~何これ!?めっちゃ面白いじゃん。そしてその茹で玉子の殻をムキムキしているとトーストの乗った皿とコーヒーが運ばれてきた。一番最初にコーヒーが来ないってことは、もしかしてハンドドリップ?なのかな。
それにしても見て下さいな、このトーストの表面!不整面というか不規則なザラつきは一斤ホールをナイフで手切りしたものをトーストした証拠だ。だからコゲ目やキツネ色はランダムになり香りや食感が豊かになものになるのよね、石臼挽きの蕎麦粉と同じさ。
先ずはコーヒーをひとクチ…ちょっとだけトガった香りと舌触り…しかも薫りは控えめ…けれどもボクは解かっているのよね、こうしたハンドドリップのコーヒーはほんの僅かな時間経過で信じられないくらいに劇的な変化をするものなのよ。しかしそれを確認するヒマもないのはせっかくのトーストが冷めてしまうからだ。

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MINOLTA  M-ROKKOR 2/40  @ SONY α7

ひとクチ…カリっ、サクっ、ややモチっ…おぉ~っ!いい感じじゃないか、美味い!だよねだよね~、ホントにコレだよねっ!めっちゃ美味いのよ、このトーストは。やっぱり手切り食パンのなせるワザかな。そしてコーヒーも予想通りそのお味や風味を変貌させてきた。深い薫り、滑らかな舌触り、酸味と苦みのハーモニー…あぁ、いいコーヒーだなあ。
一般的な名古屋モーニングの水準からゆくと平凡なモーニングサービスに違いないけれど、その本質的な美味しさを追求すると、このお店のサービスは満点に近いものではなかろうか。ヨケーなものはついていないけれど、それだけに肝心なものに注力されているのね。
時間と共に格段に美味しく変化してゆくコーヒーは上質な豆を使っている証だし、風味豊かなトースト、そしてその間を取り持つ茹で玉子&塩…これ以上ナニを望むって言うのですか。ボクは今まで「にゃごやモーニング」の駄文日記をいろいろ書き連ねてきたけれど、ちょっとカン違いっぽかったのはサービスの量やサプライズ性ばかりにメを奪われ、食としての本質や必要な朝食のクオリティーを忘れていたかに思われる。流され、染められ、侵されたってことです。こうした素朴なモーニングサービスセットで気づかされました。本当にありがたく思いましたよ。

追い書きとなりましたが先ほどから登場するお爺さんは、多分このお店の創業者さんなのではないでしょうか、ずっと銭湯の番台係のようにレジに座り続けておられました。そしてなんだか意味不明な「あ~あ~あ~」みたいな発声をずっと続けておられるのですよ。最初は何かと思いましたけど、年老いたヒトにはよくあることなのでして、若いころなら「っせえなあ、ジジイ!」とか思ったのでしょうけれど、今は何とも思わないどころか何かしてあげなくては…くらいのキモチになっているところがボク自身その年齢にいつか近づく環境になってきたからなのか…とも思う。
お爺さん、がんばってくださいね。そして末永くお幸せにお過ごしください。あなたの努力と精進で今でもお客さんと後継者(多分息子さん)も豊かなココロでこのお店のコーヒーを楽しんでいるのですから。
なんだかホッとした、そして有難いような嬉しいような気持ちでモーニングを食べ終えたのね。

さて、今日は名古屋市内中心部の行動ということでナメてまして時間も押してますから、そろそろ予定の「恋の三社巡り」を開始しなくてはなりませんな。お会計を…と思いレジに行くと件のお爺さんが優しい笑顔で待っていてくれました。¥370のコーヒー&モーニングサービス代金の支払いに¥500硬貨を差し出すと、ちゃんと¥130のお釣りを渡してくれる。そうです、いろいろ肉体テキなトラブルは抱えておられるでしょうけれど頭脳は明晰、そしてお見送りの笑顔がとても印象的なものなのでした。ボクは心から「ご馳走様でした」と申し上げてお店を去りました。


Cafe de Flime(喫茶エフライム
愛知県名古屋市千種区今池1丁目2-8
TEL=052-731-9857
ACT=7:00-17:00 土曜定休




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恋の三社巡り 第一話:高牟神社 

 古井の霊水

恋の三社巡り…どう考えてもウラブレたオッサンにはカンケーなさそうなイベントであるけれど、ジツはこの前に別の「恋の三社巡り」をジッコーしてしまっていて、それはハッキリ申し上げますとヒトの「性器」を主神として崇める三つの神社巡りなのですよ。いかがわしくかつ卑猥な思惑でそうした設定がなされているわけではなく、もっとヒトとしての根源的なもの…例えば子孫繁栄とか子供の健康や家内安全を祈願する神社なのでありまして、そーゆー意味では「恋の…」よりも「愛の三社巡り」と称したほうがいいのではないかとボクは思うのですね。本当はそちらを先に本駄文日記として発表すべきなのでしょうけれど例のHDDトラブルで延期、やむなくこちらが先になってしまったわけなのですよ。
ところで「恋の三社巡り」なんて女子中高生とか結婚願望や出会い願望の成人女性がお参りジッコーするものかと思うのですけれど、何の因果かそうしたものを知ってしまった以上俄然その気になってしまうエロおやぢなのでして、まあ煩悩ってやつなんでしょうか。名古屋の女子高生がこうしたイベントを考案したという「恋の三社巡り」、いったいどんなものなんでしょうね。

先ず行ってみたのは「高牟神社」です。
創建は成務天皇の時代(西暦131~190年の間在位)とされ社名の高牟(たかむ)とは古代の武器の代表である鉾を賛美した名称と伝えられています。歴代の権力者や尾張藩主などから崇敬され篤く保護されてきたけれども、太平洋戦争の名古屋空襲で社殿は消失してしまい、現在あるものは戦後に再建されたものらしい。
折しも梅・桜・木瓜などの花が美しく咲き始め、雨が間もなく降りだしそうな曇天ではあったけれど静かな境内に華を添えているのでありました。

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MINOLTA M-ROKKOR 2.8/28 2/40 , Ernst Leits M-ROKKOR 4/90 @ SONY α7 , INFOBAR A03 

さてこの神社が何故に「恋の…」にその名を連ねるものとなったかと云うと、どうやらダジャレ系の発想にあるようなのですな。境内には古い井戸があり現在もその水は霊水として手水などに用いられているのだけれど、神社の別名は古い井戸があるから「古井八幡」であり、また鎮座する旧地名が「元古井町」、近くには「古井ノ坂」も現存するのね…なるほど~この古井戸の古井を”恋”に結び付けているわけか…つまり縁結びってやつですな。そんなもんにもう縁がとっくに切れているボクだけれども、ウラ若きヲトメなどは良縁を夢見て参拝する…ってシクミねえ。

さあその由来である「高牟の古井」です。応神天皇の産湯にも使われた霊水であること、感謝の気持ちを忘れずに使うこと、手水の正しい作法…などが掲示され注連縄でその霊験さを保持させていますね、有難く頂戴しましたよ。

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MINOLTA  M-ROKKOR 2.8/28  @ SONY α7


まあ恋の御利益も悪くはありませんけれど、ボクとしては一番注目したいのはこの本殿の普請に使われている金具です。青銅製なのでしょうか、素晴らしい色合いに変化していますし、よく手入れされた木板がこの神社のプライドを象徴しています。そしてなによりこの金具の美しい文様とその精緻な加工技術!こうした匠の技も見逃せない魅力のひとつではありませんか。

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MINOLTA  M-ROKKOR 2/40  @ SONY α7

ちょっと薄ら寒い曇天でしたが、なかなかにいいキブンで参拝をすることが出来ました。休日の素晴らしいスタートです。


高牟神社
http://www.jinja-net.jp/takamujinja/
愛知県名古屋市千種区今池1-4-18
TEL=052-731-2900