毛ガニと千歳鶴  

あけましておめでとうございます

旧年中はたいへんお世話になりました
今年も宜しくお願い申し上げます


2008年 元旦 Art-Foods


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初日の出直前の富士山
清冽な冷気が張り詰めた大気の中で、凛とした姿を見せてくれていた


TAMRON A16 / Nikon D300
2008.01.01. 06:35 @Gendouji-Fujinomiya


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 2007年の最後の晩餐は活カニでキメた。ドコにも満足できそうなサイズのものがなく、探しあぐねていたが静岡の魚屋でようやくゲット。
1パイが約1kgと毛ガニとしては最大級のヤツを手にして、息揚々と家路を急いだ。

 それにしてもゲンキな毛ガニ君だった。店頭ではオガクズと共に氷詰めにされていて動きもニブかったが、帰ってから包みを開けると暴れるは指を挟まれるはでタイヘンな騒ぎに。
こんなにイキのいいヤツであればもちろん鮮度も抜群で、期待にムネも張り裂けそうだ。

 茹でた(正確には蒸した)カニには日本酒が一番だろう。
途中でビールのお世話にもなるが、やはり淡白な身肉にはコメの醸造酒がベストなマッチングでその美味さを引き立てる。
フィニッシュの甲羅酒というこの上ない快楽も日本酒ならではの愉しみに違いない。
北海道で獲れた海の幸には、やはり北海道産の酒がふさわしいであろうと何十年ぶりかで「千歳鶴」を助演者に抜擢してみた。

 例年はお気に入りの一つである花咲ガニなのだが、やはり繊細な風味と食べ飽きしない旨みは毛ガニに軍配が上がるだろう。
このところズワイやタラバばかりだったので毛ガニそのものも何年かぶりのご馳走となる。釧路に住んでいたコロはワリと日常的な食べ物だったが、価格も高騰し現在ではなかなかテがでない。
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 割ってみれば脚の肉もびっしりと詰まっており、絹のような舌触りとほのかな甘みが口に広がる。
よく味わうと昆布のような旨みもかすかに感じ、北の海の豊穣が濃縮された味にしばしコトバも出ない。

 活きの状態でずっしりと重たいモノは身肉もタップリで、味噌の量も期待できる。案の定コイツもその思惑通りで、甲羅をはがしたとたんに家族に笑顔が広がった。
トーシローはコレにすぐ箸をつけたがるが、お楽しみはアトに取っておこう。
 というのはこんなに濃厚な味を先に舌に乗せてしまうと、上品で繊細な味がウリである毛ガニの身肉が台無しになってしまうからだ。

 日本酒をチビリと飲りながら脚や胴の肉をハグハグと味わう。そしてついでに取り出した肉を味噌の入った甲羅に少しづつ貯め込んでゆく。
細かい部分まで食べ尽くしたアトに残るものは…
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カニの汁や破片にまみれた手を洗い、卓上を整理する。
杯に酒を注ぎ口中を清め、おもむろに取り上げる箸とその甲羅。
思いっきりつかんではバックリと口に運び…究極の悦楽がそこにある。
白く美しい艶を放つ肉にまったりと味噌が絡み、めまいがするほどの旨み。
明日のコトなど忘れてもかまわないさ、という気持ちにさえなった大晦日だった。