ヤリイカ姿寿司と津久井の新酒  


Tom-Zさんが案内してくれたのは創業が弘化元年というから今から160年以上昔から造り酒屋を営んでいると云う久保田酒造さんなのだ。
一般道から販売所に入る道も新酒の幟旗が立っていなければまず見つけるコトはできないだろうというホド山あいの目立たない場所にあり、やはり美味しい酒を醸造するためにはよい水や安定した気候も味方につけなければならないのだなぁ…となんとなく合点したボクなのである。
黒い板塀の内側は舗装もしておらずムカシのままの建物や設備がひっそりと息づいているカンジで、初冬の冷たい風や色アセた落ち葉が哀愁と時の流れを強調しているようでもある。
販売所も昔の土間そのものに木の台を置いたり畳部屋の縁に据え付けられた置き場に酒が並べられているだけという簡素な作りだが、よく手入れされ黒光りしている梁や補修を重ねられた漆喰とが、ヒンヤリと張りつめた空気と共にそこにある日本酒の味や香りに大きな影響を与えているような気がしてならない。

今回購入したのは数日前に搾ったばかりという新酒…いわば津久井ヌーボー2008なのである。本醸造ではあるが精米歩合65%アルコール分19度というスペックからは香りと甘みのバランスに優れているのではないかと云う期待が滲みでてくるようだ。
お店の方の話では師走から来年の三月ごろまで、いわゆる“寒造り”という繁忙期に入るワケなのだが次々と違った種類の新酒がリリースされるので楽しみにしていて下さい、とのコトなのである。
せっかく佳いお酒をテに入れたのだから、やはりソレに向き合わせる肴にはひとかたならぬチカラを投入して楽しみたいモノなのだ。シマッタぜ…こんなコトなら先日の「ホンモロコ」を少しとって置けばよかったにゃ〜なのだが既に消化排出されアトの祭りなのね。

考えてみれば暫く寿司を食していなかったコトに気づき、夕方富士市方面にテイクアウトの握り鮨を買いに出かけた。もともとは清水の袖師という場所で魚屋を営んでいた方が始めたテイクアウト専門寿司店なのでネタは抜群だしシャリの塩梅もまずまずなのね。
人気があるらしく切らすコトのない“ヤリイカの姿寿司”や“生シラスの軍艦巻”と云った変わりダネも併せて購入し新酒のための夕食を開始してしまうのである。
あぁ、やっぱり予想はハズしていなかったようね。若干甘みは強いがフレッシュな香りと麹の旨み、そして高アルコール濃度が生み出すスッキリした酸味のバランスは申し分ない。
以前のように酔うまで飲み続けるコトはできなくなってしまったが、こうして猪口で一杯二杯と季節の恵みを楽しむのも悪くないなぁと思える齢になってしまった。


久保田酒造
http://www.tsukui.ne.jp/kubota/
〒220-0203
神奈川県相模原市津久井町根小屋702番地
TEL:042-784-0045 FAX:042-784-2225
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