ハタハタの煮つけ

♪秋田名物八森ハタハタ、男鹿で男鹿ブリコ♪アーソレソレ♪能代春慶、桧山納豆、大館曲げわっぱぁ〜♪

秋田音頭のトップに出てくるくらい名物のハタハタである。江戸の将軍様への献上品としても慶長年鑑にも記載されている秋田の代表テキ産物ではあるが、乱獲や海洋環境の破壊によって激減し、とうとう平成4年からは三年間の自主禁漁に追い込まれてしまった。
もっとも青森や山形では従来通り漁を続けていたにも関わらず秋田の漁師だけがそうした“育てる漁業”に転換していったコトは勇気ある行動として称えられるべきものであろう。オカゲでこのスズキ目ハタハタ科の魚族も少しづつ元の勢いに戻りつつあり、こうして遠方の食卓にも上るようにまでなった。
北海道では「ハタハタの飯鮨」を良く食べたが、旬のころに出荷される子持ちハタハタはよく煮つけでも楽しませてもらった。塩焼もたまらない美味しさがあり特にタマゴは噛むと口の中でプチプチと弾ける食感が他に類を見ないモノである。そしてその音がブリッブリッと鈍く響くコトから卵を抱えたハタハタは「ブリコ」と呼ばれて珍重された。
このハタハタを内臓ごと塩で発酵させて作る魚醤はかの地方で“しょっつる”として広く普及し、キリタンポ鍋には欠かせない調味料でもあるし、もちろん獲れたてのハタハタをその鍋の具として食用にしては庶民の胃袋は温められてきたワケだ。
しばらくお目にするコトのなかったハタハタだが、先日静岡のデパ地下で発見し「煮つけにして食べようぜ♪」とココロウキウキの昨晩だったのである。

たまたま昨日頂いたモノは埼玉行田の日本酒で「日本橋」と名を冠する横田酒造さんの樽酒なのであり、まさにドンズバのタイミングでテにできたのは幸運以外のナニモノでもない。
最初の一献は拍子ヌケするほどサラリとしているように感じたが、はんなりとした旨みがジワジワと浮かび上がってきては飲み進むほどに満足感が強くなるタイプで、やはりこうした和食には日本酒なんだなぁ…と改めて思ってしまったりもするワケなのね。
カワハギの煮付けのようにホロリと身離れの良いハタハタは適度な脂も乗っていて、ちょっと濃いめに味付けされた煮汁を絡ませながら食すとあまりの美味しさに酒が進み過ぎて困ってしまう。
案の定、今朝は少しアタマが重くてハンセーしているボクなのである。