春の予感『牡蠣とアヲヤギ』

 貝類の旬は春と云われているが、年も明ければ春の予感に活発な動きを始めている貝たちなのである。

牡蠣は晩秋のころから最盛期を迎え存分にその旨みを楽しませてもらったが“あをやぎ”は今月に入ってから急にその姿を見るコトが多くなった。昨日もスーパーの鮮魚コーナーにたくさん積み上げられているのを見つけ「う〜ん、冷や酒で一杯♪」となってしまったワケなのだ。
あをやぎ(青柳)とはバカガイのムキ身のコトでオレンジ色の足を指す場合が多い。特に貝柱は“小柱”と呼ばれ天ぷらや寿司ダネ・酢の物に用いられ美味である。江戸前天丼のかき揚げなどには欠かせない食材であり、しっかりとした歯ごたえとコクのある風味旨みが熱烈なファンを生んでいる。
 しかし“バカガイ”の身が何で“あをやぎ”なのかというと江戸前という部分にそのキーワードが隠されているのだな。つまりムカシは千葉の青柳村…現在の千葉県市原市青柳…で盛んに採れたコトからその名がついた、と云うのが有力な説なのである。遠浅で江戸川からの豊富な栄養が流れ込むこの海域はアサリやハマグリといった二枚貝類にとっては絶好の生息条件であり、古来から漁業が営まれれてきたワケなのだ。
 牡蠣は瀬戸内から運ばれたものだし、アヲヤギは千葉から…。この時期ならではのお楽しみを富士山の麓でヌクヌクと頂けるのはこの上ないシアワセなのであり「このアヲヤギはうどんのトッピングにしても美味しいんだよね〜」などとウンチクを傾けながらの昨晩なのであった。