桃源郷の蕎麦処「右楽」

そんなにお天気が良かったわけでもなく気温も低かったが、山梨方面の様子でも探ろうかと特にアテもなく出かけた昨日なのである。
国道52号線を北上しているうちにふと思いついたのは笛吹市の御坂にある“みさか桃源郷公園”は今どんな具合なんだろうということだった。
名前の通り桃の樹が辺り一面に拡がり花の咲く時期には素晴らしい香りとともにピンクの花に埋め尽くされる御坂町だが、サスガにまだ少し先のようだ。気の早い樹はかなり花芽も膨らんで紅い枝先を空に向けているが、ほとんどのものがカラカラとしたハダカの樹形を晒している状態だった。

そのまま引き返してもつまらないので地図を眺めると「すずらん群生地」などというポイントがありちょっと覗いて見たくなったのね。西湖や河口湖の北側にあたる芦川の源流部にソレはあり、グイグイと山道をメガーヌで登り峠を過ぎたあたりで案内看板を見つけた。
やはりグリグリと山道を突き進むとちょっとした駐車場もある群生地の入り口に到着した。まだ冬も終わり切っていない山野には枯れた草木があるばかりだが、五月も過ぎればここにも緑が拡がりすずらんを楽しむことができるようになるだろう。お楽しみをまた一つ見つけたというコトで元来た路を引き返す。
フツーは「さて、お昼ゴハンはドコで食べるか…」となるのだが、へへっ♪途中でちゃんとチェックしておいたのよ“手打ち蕎麦”というサインを。通り過ぎてしまいそうななんでもない道の途中から入りクネクネ進むが間もなくそのお店は現れる。
クルマを停めると御主人がお店から出てきてお迎えしてくれた。店内は蕎麦屋のイメージとは違うが洒落たデザインも落ち着きがあるのは和の調度品がセンスよく配置されているからだろう。石和の街や八ヶ岳連峰が一望出来るカウンター席もあり、こんなところで蕎麦と酒を楽しめたらサイコーなのにねぇ…とタメ息さえ漏れてしまう。
注文したのは“ざるそば”。「信州安曇野の蕎麦粉に行きついた」と御主人がおっしゃるようにこの土地の水である御坂山系の伏流水との相性が好いのかも知れないが、リクツはさておきとにかく美味い蕎麦なのである。

久しぶりに本物の美味しい蕎麦をいただいたような気がして、食べている途中で「コイツはもう一枚イケるぜ!」と確信したボクは迷わず追加オーダーをお願いした。
甘み・香り・のど越し…全てにバランスよく、それは無理して十割にこだわっていないところがいいのかも知れない。おろしワサビを蕎麦にチョイとつけてそのままクチに運べば右楽さんの蕎麦がどれだけ素晴らしいものかスグに判るだろう。
甘味は蕎麦粉を用いた柔らかな一品。うっかり名前をお聞きするのを忘れてしまったが、ムースのように滑らかな舌触りの葛固めのようなものに程良い甘みの黒蜜がいい感じでかけられている。食後のお楽しみはジツに品のよい蕎麦スイーツなのであった。

この地に居を構えて20年になるというご主人だが、イタリアからお帰りになったご子息がつい最近甲府市内にイタリアンのお店をオープンしたというコトを嬉しそうに話してくださった。
またもやウッカリその店名や場所をお聞きするのを忘れてしまったが、あまりに美味しい蕎麦についコーフンして舞い上がってしまっていたのだろう。まぁいいや、桃源郷まつりやスズランの時期にはまたココを訪れるコトになるだろうから、その時にしかっり聞こうではないか。
蕎麦はよく売り切れになってしまうらしいので、行く際は確認してからお伺いしたほうが良いだろう。蕎麦好きには一度は訪ねていただきたいお店である。


蕎麦処「右楽
http://www.uraku-info.com/teuchisoba/index.html

山梨県笛吹市八代町竹居5740-267
TEL=055-265-4406
ACT=11:30→15:00 火水定休
E-Mail=uraku@uraku-info.com