わさび漬

清流にひっそりと生育する山葵。その昔は天然モノしか手に入らなかったものだが、駿府城を拠所とする徳川家康の庇護により栽培法が確立したのは江戸時代と云われている。

そんなワケでワサビは長い間駿府(現静岡)の名産の栄誉を欲しいままにしていたが、現在では日本全国の高冷地で大規模な栽培も行われるようになり、葉つきの生ワサビはスーパーでもテに入るようになった。
そのワサビは生をすりおろして薬味として使用するのが主たる用途なのだが茎なども併せて漬物としても利用されている。代表テキなものとして“わさび漬”があり、信州や伊豆の土産物としても珍しいものではなくなった。


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以前に某百貨店のギフトカタログ制作の取材で静岡市内の老舗わさび漬屋さんにお邪魔したことがあり、ご主人に「製造現場を拝見したい」とお願いするとすんなり案内してくれた。
さぞかし手の込んだ作り方をするのかと思っていたら案外シンプルと云うべきか単純な工程にちょっと拍子抜けしてしまった。刻んだワサビの根や茎を酒粕に混ぜて合わせるだけ…
「どれくらい熟成させるのですか?」と聞けば「いや、コレで終わりだよ。新しい方が香りも辛味もいいしねぇ」とアッサリしたものだ。
酒粕の銘柄や配合にそれぞれのお店の工夫があるらしいが、ソレも基本テキにはそう変わりはないらしい。サスガに吟醸酒酒粕を用いたモノはエクセレントなお味だったが、やはりフツーの“わさび漬”が飽きも来なくて一番好みなのである。
ちょっとだけ醤油を垂らしてカマボコなどに乗せて食せば、胃の働きも活発になって酒もさらにすすむ。おっと、メインの蕎麦を作る前に食べすぎてしまっては興醒めなのね。いくら美味しくてもほどほどに…自戒の昨晩なのである。






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豆の花か…
何の豆かは知らないけどね


Stroll on afternoon, March 17. 2009.