広島から倉敷へ『むらすずめ』

暑い時期になると冷麺はよく食べる。昨年は幾度となくソレを食し、各地のスープや麺の違いを楽しんだ。
ところがもう一つ根強い人気がある麺に“つけ麺”というものがあり、ボクはしばらくぶりに食してみる気になった。というのもかなり前の話だが評判が高いと言われる某店で試してみた時の印象がイマイチで、それ以来「つけ麺なんてそんなもんか」と距離を置いていたからだ。

少し前にクルマの中で聞いたラジオ番組の中で“今、広島風つけ麺が人気”という話題を小耳に挟み、なんとなく気になっていたところにCO-OPの宅配カタログに登場したワケで、懐疑テキな気持ちを抱きつつ注文してしまったのよ。
事前情報では中太のもちもち縮れ麺と唐辛子の入った辛いつけツユが特徴で、一般テキには茹でキャベツや千切り胡瓜を添えて食すと云う。期待を込めて開封したが出てきたものはフツーの麺に近いもので少しガッカリなのである。ソレでもと気を取り直してキャベツやモヤシを茹でたりチャーシュー替わりのヤキニクを少々と、なるべくオリジナルから大きく外れないように工夫をしてみた。
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おぉ〜っ、この辛いツユはなかなかイケるではないか!麺の食感はあまり褒めるべき要素はないが、茹でた野菜がツユの暴れ具合を上手にいなして結構な麺食なのである。盛夏の折などこの辛さを思い出しては食してみたいヘルシーなつけ麺で、レパートリーが一つ増えたのは喜ばしいコトなのである。


さて、このところアルコール摂取を控えているせいか、食後にクチが寂しくて仕方がないのだ。クリームを使った洋モノはもちろんダイスキだが、カラダのことを考えると和菓子系が真っ先に候補に上がってくる。

過去に数回食したことがある“むらすずめ”は倉敷の銘菓で、亡き父上もスキだったようである。豊作の稲に“群がるスズメ”に因んで名づけられたと云うこの菓子は可愛らしいカタチをしており、またそのお味も備中の老舗和菓子店らしく品よく仕上がっている。
簡単に表現すると“どら焼系”なのであり、皮の甘く香ばしい味と小豆餡の出来にバランスさせる手腕が問われる菓子なのね。ふんわりしっとりした皮はどこか懐かしく柔らかな食べ心地で、追いかけてくる小豆の味を引き立てている。少し濃いめに淹れた緑茶でクチを直しながら食せば、ひとクチもうひとクチ…といつまでも食べ続けたい気持ちになってしまうのは困りものだ。
粗末な夕食であってもこうしたお楽しみを最後にキメてくれると、心にユトリというものが出来て宜しいものである。しかし調子に乗ってアレコレとテを出してしまうのは戒めなければならないのね。


倉敷「橘香堂」
http://www.kurashiki.co.jp/kikkodo/