油揚げと葱をタマゴでとじたシンプルなドンブリ飯だが、なんとも美味しくてときどき作っては楽しんでいる。
いいコトは食味ばかりでなく材料費も申し訳ないくらい安上がりだし栄養価テキにもバランスがいいので、燻し銀の演技で魅了する隠れたスター的丼物だ。
衣笠丼の由来は第59代の宇多天皇が真夏に雪景色が見たいとワガママを言い出し、側近がいやいやながらも衣笠山に白絹をかけて天皇にゴマをスったと云う故事から、タマゴの白身にとじられたネギの青みと油揚げの黄金色が丁度その時の衣笠山に似ていた…というところに例えたものらしい。いつの時代も権力者とはそーゆーモノだろうし、ソレをちょっと揶揄する庶民の感覚も今昔変わらぬ姿である。
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本来は九条葱・亀岡の卵・京揚げなどを用いるのだろうが、代用できる食材は富士宮にたまたま揃っていて全て新鮮な地元産品と云うのはありがたいコトだ。
粟倉の青葱、朝霧高原のタマゴ、白糸の油揚…地産地消のカガミのようなドンブリなのである。残念ながら醤油だけはヨソの食材を調達しなければならないが、ダシに蒲原の削り節を使っているので許していただきたい。
出来ればちょっと酸っぱい“しば漬”などあれば申し分のない食事となり、ワガママ天皇のようにお上品に食すなど不可能な美味さでワッシワッシあっと言う間に終わってしまうのである。