清水ミナトの中國料理『盛旺』


父が他界して丸々十二年の月日が流れることになる今日である。
東北関東で震災が発生し停電など落ち着かない状況下ではあったが、先月の末にその十三回忌を清水にある菩提寺で執り行った。

清水と云えば父が生まれ育った町、ボクもそこで生まれ4歳くらいまで過ごしていたが転勤族の常で以降は北海道など各地を渡り歩くことになった。
落ち着いたのはここ10年ほどだろうか、父が居を構えた富士宮は縁も所縁もない土地だがなんとか暮らしている。
地震津波で家族や家そして職場も失ってしまった方々が避難先で「故郷に帰りたい、そこで暮らしたい」と仰っているのを聞くと(そう思う故郷があるってのはいいなあ…)と思ってしまう。

ボクなんぞは生まれた町より育った町のほうが長い年月を過ごしているし、現在居住している町が最終テキに一番長くなってしまっているものだからドレがホントの故郷なのかヨケーに判らずにいる。
ソレでも鮭が生まれ故郷の川にその本能と臭覚を頼りに戻ってくるように、ボクもたまに清水の街を歩くとなんだか懐かしいようなホッとするキモチに包まれてフシギな感覚に囚われる。風の匂いがスッとカラダに溶けてゆくような一体感があるのは事実だ。

そんな港町・清水の中國料理店『盛旺』さんを知ったのは父が亡くなったアトのことだ。菩提寺からほど近い場所にありクルマで通りかかった時に
(ちょっと敷居は高そうだけど、なんだかヨサゲ…)
と思い切って入ってみたらコレが驚愕のスーパーチャイニーズレストランだったワケである。お値段はややアッパーにシフトしてあるが、かといってベラボーに高いものではなく、ごくフツーに利用できるところが有難かった。
以来何度か食事を楽しみ、とても気に入ったので三回忌・五回忌と故人を偲ぶ席を用意して頂いた。今回も一も二もなくコチラにお願いする運びとなり、人数と予算だけ伝えてあとはお店にお任せと云う寸法で挑んだのである。

前置きが長くなったが、その素晴らしいお料理の数々を「どーだマイッタか〜!」みたいに自慢せずにはいられない…違う!「こんな素晴らしいひとときをぜひアナタにも」とご紹介差し上げたくなるのが人情というものだろう。
前菜は左上から時計まわりに麻機れんこんのボイル、金針菜(ユリの花芽)と山水母の和え物、アワビの蒸しもの辛子ソース添え、帆立貝の棒々鶏風、車海老のスチーム、ホタルイカのマリネ。中華におなじみの食材もあるが、徳川家康公もお気に入りだった幻の蓮根・麻機(あさばた=静岡の地名)れんこんをチョイスしてくるところがニクい。

シンプルな人参のジュリアンの後に登場したのはなんと岡部町のタケノコ!ええっ、もうタケノコですか?!という春の便り第一弾はもちろん今季初モノである。浜名湖の新海苔とともにカラリと油で揚げ、塩だけで食すという素材の活かし方に感心する。
アクも少なくはんなりとした香りと甘みが筍の歯ごたえに融和してキモチいーのである。香ばしい新海苔の薫りが完璧なアシスタント役に徹している。

温泉タマゴにかけられたソースは自家製のラー油だという。一般に市販されているようなフライドガーリックなどを主体にしたものではなく、干しエビやその他の食材が広がりのあるエスニックな旨味を形成していて格の違いを見せつける。
春キャベツの辛子炒め。なんてシンプルなお料理ですこと! だから余計に柔らかなキャベツの甘みや香りが引き立つのだな、う〜んゴハンが欲しくなるけどココはガマンだ。皿に残った炒めエキスを恨めしく思いながらも次のお料理のためにサヨナラを告げなければならないのはヒジョーに心苦しい。
いよいよメインっぽくなってきた。料理名はカテゴリから云うと八宝菜系、いわゆる牛肉と季節野菜の炒め物ってコトになるのだろうが、使われている食材はハンパなものではなかった。

肉はあの“静岡そだち”つまりA5ランクの和牛が惜しげもなくドッサリ奢られたものに数種のキノコや新鮮な野菜が合わさっている。フォトではちょっと判りづらいかもしれないがアスパラやニンニクの芽以外にウド・タラの芽といった春の野草が用いられていたことに乾杯なのである。素晴らしい組み合わせ、こんな料理にも季節感は盛り込めるのだ!という感動がある。

定番の海老のチリソース煮というひと皿にはケチな小海老など使っていない。かなり大振りの車海老はぷりぷりなどと生優しい食感ではなくブリブリしているくらいにファットな噛み心地で、こーゆーエビチリを一度でも味わってしまうと、もうアト戻りが出来なくなるのを危惧してしまう。う〜んキンチョー感のあるお味がジツに美味いが、相棒がノンアルコールビールというのが悔しくて堪らない。

ほとんど塩味に近いような炒め物はタアサイにキクラゲと自家製豚スモークを合わせて仕上げた逸品だ。
銘柄豚である遠州豚の加工品の正確な名称は訊いたにも拘わらず忘れてしまったのはなんともナサケナイが、とにかく美味かったのでいーのである。ちょうど中華風に作られたベーコンのようなもので噛めば噛むほどギュウと旨味が滲み出てくる。
コレってそれだけて酒の肴にならないか…などと呑み助はつい外道なコトを考えてしまうのであった。
県内各地のヤサイやニクがバランスよく出てくるなあと思っていたら、ようやく清水らしいひと品の登場だ。マグロの黒酢あんかけ、黙って食せば食感テキには酢豚に近い弾力と脂の旨味がジワリ広がる。

黒酢の香ばしくそしてサワヤカな甘酸っぱさに包まれたマグロの肉は次第にその本領を発揮しだし、クチの中で噛んでいるとマグロだけが持つ独特の滋味が食すヒトの頬を緩みっぱなしにさせるのだ。ヘタな店で食すマグロステーキなど足下にも及ばない高貴な旨味が強く押し広がってゆくのが判る。


ロッコリのかにあんかけ。よくある料理だが本当に美味いと思えるお店はジツは少ない。
こうした料理を食すとそのお店のポリシーみたいなものが露呈するのだな、手ヌキはいくらでもできるし、見た目だけリッパに繕うことはちょっと料理に手慣れた者ならばカンタンなことだろう。
しかしココにはそうした妥協は一切ナシである。近隣で採れた新鮮なブロッコリを蒸し、そこにしっかりと清んだガラスープを合せて作るかにあんの妙味、冬から春に向かうヨロコビが美しく表現されたような料理である。


シメはお馴染みの炒飯だ。この春に解禁となったばかりのシラス干を高菜とともに香ばしく炒めあげたゴハンであった。以前にコースでお願いした時は夏の盛りのころだったので、やはり季節の食材をあしらった冷麺でシメくくるように設定されていて感心したものだったが、今回はコレでキタか!と喜び食す。
しかしジャコと高菜の炒飯なんてものはドコにでもあるようなモノなのに、ココのはどうしてこうもお味にふくらみと豊かさがあるのか…とフシギに思えるのよ。

キリッとカドの明確なお味の炒飯に合わさるスープは浜名湖産の新生海苔がフィーチャーされテンダリな風味である。ちりばめられた貝柱が深遠な旨味を醸し出していて胃に優しく収まってゆくのが判る。
あぁ美味しい…
永遠に吸いつき飲み続けたい衝動に駆られるこのスープのお味は、このお店の実力を如実に語るファンタジーだろう。
一通りのお料理を食し(ふう)と落ち着いたところにデザートだ。このお店に来れば必ず注文していた杏仁豆腐だといいね…と話をしていたら、まさにそれがドンズバに運ばれてきた。いや〜ん♪参りましたねえ、嬉しいなんてもんじゃありゃしない!なのである。滑らかな舌触り、クリーミィな味と香り、やはりマゼモノのない自家製でなければこの味は出ない。

クルマでの移動のためアルコールはご法度、数本のノンアルコールビール以外はこの中国茶だけで通した。
上等な茶葉ほど何度でもよく出てくれて、お湯を注しても注しても素晴らしい香りが立ち上るのにはみょ〜に得をしたキブンになるものだ。
うっかり茶葉の銘柄を確かめてくるのを忘れてしまったが、たしか銀針云々というようなナマエがリストにあったような気がする。
あぁ喰った喰った…とエロおやぢは下品につぶやくのであるが、フシギなことにいつものようなモタレや膨満感はない。


本当に質のよい料理だけがこうした満足感を与えてくれるのかも知れない。
きっと父が「ヘンなもんばかり喰らってカラダをいじめるんじゃないよ」と教えてくれたのだと思う。
感謝の一日であった。






中國料理 盛 旺
静岡県静岡市清水区袖師町1098
TEL=0543-66-6096
ACT=11:30-14:00, 17:00-21:00 不定
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かぶちゃん
こんちわ〜 えへ、今日はイタリアン「ROMEO」か讃岐うどん「しん」か迷ってさ…
ドッチも行ったことのあるお店なんだけど、結局讃岐うどんを選んじゃった(^o^)v
ん〜だけどね、ROMEOもかな〜り美味いのよ♪ 次回清水に行ったら迷わずソコだな! ワタリガニのトマトクリームパスタなんて絶品さ( ´艸`)ムフフ
盛旺さんは本当に素晴らしいお店だよ。みんなで円卓囲んで楽しむ機会があるといいのにね…



元ルーさん
おはようございます! 
海外メディアのほうが正確な情報を早く… って恐ろしいことですよ。もしかしてバカ政府が報道規制かけてる事案かもしれません。国内メディアはアテになりませんからBSのワールドニュースをしっかり確認しましょうか。
へえ〜、そのお店では食事をしなかったのですか? でも今度行くチャンスがあってもヤメておいたほうがよさそうですね(笑)食べきれなくてもったいないですから (´▽`*)アハハ
富士宮はルーテシアよりカングーがナゼか多いのですよ。昨日もブルーメタンのカングーと白いビボップを近所で見ました。メガーヌ2はサスガに減少傾向で(笑)ちょっと寂しいです。え?ボクですか? まだまだ乗りますよ〜 (^o^)v
こんな【ポポポポ〜ン】もありました〜