メガーヌ君メンテナンスの合間に…其の弐 宇津ノ谷峠の御羽織屋さんと『十団子』

さてさて天丼でハラもいっぱいになったところで本命の宇津ノ谷峠に向かうことにした。道の駅からはプラプラ歩いて十数分、ハラごなしには丁度よい距離である。

静岡市中心部の西にある丸子宿から藤枝・浜松方面に向かう岡部宿に行くためには宇津ノ谷峠を通って山越えをしなければならない。このルートは平安時代から使われている道で、徳川家康が全国統治のために定めた五街道のひとつ・東海道とは若干異なる「蔦の細道」と呼ばれる古道なのだな。
その名の通り蔦や蔓が生い茂る暗い細道で伊勢物語の作者・在原業平はその紀行文にこのことを書きしたためている。また豊臣秀吉も小田原・北条征伐の際にはこの峠を越して東に向かったわけだが、往路・復路ともに休憩に立ち寄った石川家に秀吉の着用していた羽織が褒美として与えられ現在も実物が保存されている。

御羽織屋という名はそんな歴史からそう呼ばれるようになったらしいが、ボクが気になってシカタがなかったのは“静岡名物・宇津ノ谷十団子(とおだんご)”と染め抜かれた幟旗なのであった。
静岡県の名産・名物は全て知っているつもりだったが正直コレは初耳だ。もしかして近年流行りの付け焼き刃B級グルメのようなもんで、どこぞの商売上手が考え出したエセ名物かもよ〜などといーかげんヤローは一瞬思ったりもした。
ところがコレは古くからこの地に伝わる逸話に基づいた食べ物なのであって、由緒正しき厄除け団子であることを知るのである。

おぉ〜そうか!まあそうしたハナシよりとにかく喰ってみたいではないか…と御羽織屋さんの門をたたくと
「残念ながら今日はもう売り切れでございます」
と無念の結果。静岡市内の某和菓子屋さんで製造している『十団子』はこの御羽織屋さんのみで販売されていて他では入手不可能なものらしい。ってことはどーしても喰いたけりゃそーとー朝駆けして狙い撃ちしないとダメってことなのかな。お〜っし、今度いっちょやったるで!と急に関西人のように吠えたりもするが、とにかくその日は喰えないのである。
落胆しているとその石川家の末裔と思しきご婦人が
「十団子のお守りならございますのよ」
と親切に仰ってくださったので(おいくらですか?)と訊けば八百円也とお答えになられるではないか。

くっそ〜、お守りの分際で本家の十団子=¥600より高いのかよ…と思ったが、このところヘンな野郎に言いがかりをつけられたり人生の妨害行為をされているので(これも何かの縁、お守りも必要かな)と購入することにした。
御齢九十を越えておられるご婦人は達者な口調でこの“十団子の由来”を丁寧に説明して下さるのであった。話は長いが要約すると
「旅人を喰ってしまう鬼が宇津ノ谷峠に棲んでいたが、ある時旅人に仮装した菩薩にダマされて十粒の団子に化けたところを、すかさずひとつ菩薩に喰われてしまったらしい。以来鬼はおとなしくなって旅人を襲わなくなった…」
という言い伝えなのである。
転じて十粒つなげた米粉団子が厄除けとして軒先におかれたり、旅人の安全祈願として販売されるようになったとされている。当時はハラの中にお守りを入れるという意味と、栄養を摂取してチカラをつけるという両方の意味があったに違いない。

江戸期も元禄のころになると世の中はゼイタクになり、こうした厄除け団子も形式だけのものに変化してゆき現在の数珠のような小さな粒で作られるようになったらしい。
この直径8mm程度の団子はひと玉十粒のコメで作られていて一本に10玉、それが九本束になっている。(あれ十団子だから十本束じゃないの?)と思うが、あとのひとつは菩薩が飲みこんでしまった分…転じてお守りも完全なものではなく十のうちひとつは自身で考え工夫をして自らを守りなさい…という有難き教えなのだな。う〜む、なにごともヒト任せはいけないのよという菩薩の慈悲でもあるか。
たいへんお勉強をさせていただいた十団子の由来だけれども、やっぱり食べられる団子だって欲しいじゃんね。まだ実物をテにとってみたこともなく写真でしか知らないが、五種類の団子が二個づつ入った箱入りらしい。抹茶の緑、桜の赤、ミカンの黄色、ニッキの茶色、ゴマの黒…と全て地元産の天然食材で着色されたものらしい。
そしてうるち米の新粉でつくってあるのでさっぱりしていて“ういろう”に近い味わいだと聞く。やっぱり丸子のお茶と相性がいいんだろうなあ、早く食べてみたいなあ…


御羽織屋
静岡県静岡市駿河区宇津ノ谷171
TEL=054-258-1488


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まあ、なんてお下品なビルなんざんしょ
しかしねえ、いくらなんでも…
シゴト帰りの疲れたカラダにゃ刺激が強いしさ



May 31. 2012. @Yoshiwara, Fuji-City






かぶちゃん
キャバレーや飲食店の雑居ビルですよ。