新年会である。といっても予約をしてあったわけでもなく、ましてやお決まりのコースをお願いしてあったのでもない。ただ(どこか旨いヤキトリでも喰わせてくれる老舗の居酒屋でもないかな〜)などと行き当たりばったりにホテルから足早に歩いてみる真冬のヨルなのであった。
シゴトが終わってから向かった静岡市、すっかり暗くなってしまいおまけに風も冷たいではないか。ハラも空いたしサッサとヨサゲなお店を見つけてはヌル燗の日本酒でもチビリと含みながら楽しむイナタい庶民料理…な〜んて想像をしていたのだけれど、いくつか歩いてみた感じではなかなかグッとくるものを見出せないでいた。少々のアセリさえ感じてくるではないか。そんなときに通りすがりの小さなお店の窓とドアからカウンターのみらしき店内の様子がチラリを目にはいってきた。数人の壮年男性が飲食しているようで(なんだかパス…)とスルーしたのだが、しばらく歩いてからどうにも気がかりで仕方がない。引き返してもう一度覗きこんでみると店内の客は一人だけになっていた。予定とは全く違う傾向のお店だけど入り口の立て看板のメニューではお値段も安いようだし(お〜っし、いっちょ冒険してみよーか)みたいに入ってみることにしたのよ。
六人も座れば満席というカウンターのみ、目の前にはキッチンとそこに立つオーナーシェフらしき男性が一人…という極めてシンプルなスタイルだ。インテリアもみょ〜に凝ったものは何一つなく楚々とした造りが気持ち良い。なんだかワクワクするじゃん。
メニューブックにひと通りメを通すが、黒板に案内されている“本日のおすすめ”みたいなお料理から先ずはお願いしてみた。『真鯛のカルパッチョ』はいかにも前菜テキなもので白ワインにぴったりのひと品と気軽にオーダーしたのだけれど、ほどなくして出てきたそれを見たエロおやぢは驚愕するのであった。素晴らしいセンスの盛付ではないか!しかもお味だって超一流だよ、参ったなあ。
それは“お通し”みたいなカタチで出された『ポテトサラダと生野菜』を食したときにゾクゾクっとするような予感としてあったものなのだけれど、あまりにこのお店のお値段設定が安過ぎるので(あまり期待しちゃいけないんじゃないか)というブレーキも自然に踏んでいたのよね、いい意味で大きく裏切られたカタチだ。
少し軽めのお料理から…と『太刀魚と茄子のグリル バターソース』をお願いしてみた。肉厚な太刀魚と茄子が焼き網に乗せられグリルされるが、本当に新鮮な魚でなければ発することのないエクセレントな薫りが店内に発散される。そして和食のエッセンスも散りばめらられたプレートが目の前に差し出された。美味い、とにかく美味い。脂がのってふわりと柔らかな太刀魚に芳ばしい茄子、そしてちょっとアクセントを加えるバターソースのバランスがジツにいい。へえ〜、こんな素晴らしいお料理に出会えるなんて今夜はサイコーじゃん!
そんならニク料理だって期待してもいいかな。だったら赤ワインだよな、しかしフルボトルで2野口君からオツリが来るんだよ…なんだか申し訳ないようなキモチ。
『ラムのロースト』はもちろん作りおきしたものではなく、オーダー毎に丁寧にスパイシングされてグリルとオーブンで調理されたものである。いい香りだ、ほとんどカンペキな仕上がりである。添え物だってフライドポテトのように乱暴な組み合わせではなくジャガイモをキッシュのように仕立てたものでテ抜きは一切ない。困りますね、こーゆー料理はワインを飲り過ぎちゃうじゃないの。
調子に乗って“フォアグラのポワレ”をお願いしたのだが残念なことにこの日は売切れ。だが「テリーヌにしたものならありますよ」という有り難いプレゼンテーションに即乗ってしまうボクたちだ。こいつももちろん濃厚なパテのようにまったりと舌に絡んでくる感じがたまらない。そして驚異だったのは添えてあるものがトーストしたバゲットだけでなく“りんごのグラニテ”だったことなのである。いい、天国に最も近いテーブルだよ〜ココはさ。
この辺りから寡黙な印象だったシェフ殿の塚本氏から少しづつお話をしていただけるようになる。市内の一流ホテルでシェフをしていた氏が独立してこのお店を開いたのは一ヶ月ほど前のことで、まだ固定客がつくとか繁盛するとかいったレベルの期間は経ていないのだと言う。そうでしょう、そりゃ駅北の繁華街でもなく近年ようやく栄え出した駅南の通りの一角にあるのだからクチコミしかその伝手はないのかな。
メニューブックにフルーツを使った献立がずいぶん目についたのは、このお店を島本青果さんという老舗がバックアップしているからなのか。静岡産の野菜や果物を使って“静岡の味作り”におもてなしの心で挑戦してゆく…という熱い想いを塚本シェフはお持ちのようだ。最後にいただいた『ブイヤベース風魚介の煮込み』はそうした信念をチカラ強く支える技術の高さを物語っていた。
クリスマスに美味しいお料理を堪能させていただいたお店も素晴らしかったけれどお値段はちょっとキビシい。この日これだけのお料理とビール・白ワイン・赤ワインとアルコールをいただいたにも拘わらず1諭吉からオツリが来るような処はそう滅多にあるものではないだろう。しかもお味はシツコいようだけれど超一流なのよ。
まだヤッツケていない献立もたくさんあるし近いうちに必ず再訪するぞ!という宣言をここにするエロおやぢはコーフンしていたのでお店の外観を撮影するのも失念していたからなあ…次回は絶対に忘れないようにしなくっちゃあね。
そう、そしてこーゆーお店をキッチリと応援しなくては人生のイミってもんがないのである。
◆ la table de shima
静岡市駿河区南町7-9 サウスパラシオン1F
TEL=054-282-5159
ACT=17:00-24:00
凍てつく大地
いよいよ厳冬期に突入ですね
7:37AM, January 13. 2014. @Subashiri, Oyama-Town
梅成弟子丸さん
こんにちは!
こんなお店を待ち望んでいたんですよ!いや〜偶然とは云え、よくぞ巡りあったものだとこの幸運に感謝しています。そうそう、ココはナイフ&フォークではなく“お箸”で食すフレンチ!ってところもまたいいんですな。
どーです、近いうちにご一緒しませんか?