源兵衛川のせせらぎと老舗名店・桜家の『うな重』

姪の婚儀が三嶋大社で執り行われることになり「水の都・三島」と呼ばれるその町に行った。富士山の伏流水が市内各所に湧き出る三島は旧東海道の宿場町でもあり、人口の割にはその賑わいに特別なものがある。
それは子育て支援や福利厚生に篤く人口が急増している長泉町が隣接していたり、大きな私立大学を含む文教地区がある上に首都圏へのアクセスが容易なJR新幹線三島駅の存在、県東部の観光地・伊豆や箱根への玄関口…といった条件がこの町の繁栄に結びついているのではなかろうか。

そんな三島市の中心部を流れる清流に「源兵衛川」がある。
周辺の耕地を灌漑するために三島楽寿園内にある小浜池から水を引き用水路を造ったのは室町時代で、三島の豪族・寺尾源兵衛がその指揮を執ったことがこの川の名称の由来と伝えられている。
高度経済成長のころには水量の減少と質の悪化により死にかけたこの川は「源兵衛川を愛する会」や「三島ホタルの会」などによる努力の結果、現在はすっかり以前の姿を取り戻しホタルが舞う美しく清らかな水辺の環境が復活し、親水公園としても人気なスポットになっている。

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シゴトを終えて帰宅し急ぎ支度を調えて三島に到着したのはもう薄暮の時刻だった。いつもなら“例のコース”ですっかりゴキゲンヨッパが出来上がっているころなのであって、もう何でもいいから冷たいビールと空いたハラを満たすものをくれ!とアセりまくりのエロおやぢなのではあるけれど、母上と妹夫婦が同行する手前、そうジタバタも出来ないのである。

「せっかく三島まで来たんだから」と皆で協議して決まったお店は鰻蒲焼の名店でもあり、創業は安政三年という老舗「桜家」さんなのである。
う〜む、一度入ってみたかったんだよねぇ…平日の昼間から行列は当たり前、静岡県東部で鰻の蒲焼を食すなら絶対にこのお店ってくらい各種メディアでも採り上げられている有名店だ。
しかし風情のある店内だ。ブ厚い銘木単板テーブルやシブいインテリアに老舗の歴史を感じ取れるし、否が応でもそのお味に期待は昂ぶる一方となる。

婚儀は翌日なので、まあ前夜祭とも言える酒席をこうしたお店で迎えられるのは誠に以って幸運なことなのだと思う。もちろん用意されているアルコール類もハイクラスばかりなのであって、平素のように安物の発泡酒を冷凍ジョッキに注いで「イェ〜イ!ぷは〜」なんてマネはもちろん不可能だ。
そしてフツーは『うな重』のみを楚々といただいたとしてもお腹はいっぱいになるのだから乾杯の肴をあまり欲張るべきではないと思うのだけれども、滅多にないチャンスにどうも気が緩み、タガが外れてしまったのか幾つかのお料理をお願いすることになった。
『うざく』は胡瓜に鰻の白焼を合わせた酢の物で、こーゆー肴はなかなかにお目にかかることがない。比較的に高級なお店でしかホンモノを食すことは出来ないひと品であるけれど、流石にこちらのお店のそれはエクセレントである。本当に美味しい。
そして生半可な調理人が嫌がる『白焼』を山葵醤油でいただいたり、今や全国テキに有名になってしまい入手困難になりつつある焼津の銘酒『磯自慢』を片口と錫の猪口で飲ったりもして、ますます有頂天状態に突入してゆくのである。
そしていよいよこの日の真打が登場するのだ。


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バ〜ン!どーだい、まいったか〜!の桜家『うな重』である。メニューは各種あるけれど量の違いだけで質は全て同一…とベテランらしき中居さんに教えられた我々はごく標準で最小量の『うな重』をお願いしたのだけれど、いや〜もうコレで充分ですな。

トロけるような舌触り、甘辛加減が絶妙な焼タレ、やや硬めにチューニングされたゴハンの炊き具合、添えられた肝吸いの美しいお味…どれをとってもカンペキである。サイコーです。
鰻の蒸し加減は深めで、そこは好みが分れるところかも知れないけれど「こうじゃなきゃダメ」みたいな絶対テキ価値観を持ち合わせていないエロおやぢ(まあテキトーいーかげんとも言えなくもないけれど)にとっては「これはこれでまたいいじゃないか」と全てを受け入れてしまうのである。ネットでの評判を検索するとあーでもないこーでもないとケチばかりつけている族がたくさん見受けられるけれど、待たされたから星ふたつ減点などと評価していて「オマエはファストフードチェーンのうな丼でも喰ってろ!」と言いたくなるバカもいた。そいつは「観光地ではファーストフードを食べて、美味いのもは都内でゆっくりってのが持論」などとほざいていて、もう呆れるを通り越している。だいたいにおいてファストフードをファーストを記述しているところからしてそいつの知的水準が判るけど…おっと脱線ですな、元へ。まあ世の中いろいろなのである。
本日の駄文日記の冒頭に源兵衛川を紹介したのは、この三島のウナギ料理と深い関係があるからなのだ。富士山の清らかな湧水でしめるところから始まるという鰻の蒲焼、やはり美味しい料理には美味しい水が必要なのである。
お値段はソレナリではあるけれど、なにがしかの折にはいちど食してみることを強くお勧めしたい桜家さんの『うな重』だ。ただし観光客で混雑するランチタイムより出来れば夜のほうがいいと申し添えしたい。




うなぎ 桜家
http://www.sakura-ya.net/
静岡県三島市小路町13-2
TEL=055-975-4520
ACT=11:00-20:00 (売り切れ仕舞い) 水曜定休




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