釧路からやってきた『毛ガニ』の甲羅盛り

カニと云えばやはり年末年始の恒例美食、庶民のささやかなゼイタクとしてごくフツーに食されるものですね。まあエロおやぢなんぞは決して金持ちではありませんが、しかしそんなにビンボーってわけでもありませんから時々は食すわけですよ。

昨年末は釧路の北釧水産さんというところに花咲ガニを注文しまして、そりゃ大そう美味しくいただいたものですけれど、今回は黄金週間の連休ってこともありましてね「たまにゃカニもいいべさ…」テキなノリでまたまた注文してしまったのですな。
どんな種類のカニするか決めてはいなかったんですけどね、やっぱり花咲がいいかな〜なんて思っていたところ、同社のホームページでは「花咲ガニは旬ではないので取り扱っていない」旨が表示されておりましてね、逆に現在は十勝沿岸から釧路・根室にかけてのエリアが『毛ガニ』の旬なのだという。う〜むそうか!知らなかったぜ!長いこと釧路に暮らしていたくせに『毛ガニ』の旬を理解していなかったなんて恥ずかしい話だよな…とハンセーしつつ、そのいくつかあるプリフィクスから“「超」まかない用「活」毛がに 1.5kg前後入(2〜5尾入)”というものをポチッとするのよ。

そしてそれは予定通りの日程で到着したけれど「活」を朝茹で未冷凍という素晴らしいスペック、もうわくわくしてたまらないぜ。こいつは夕食に思う存分いただきましょうかってことで昼メシはワザとインスタントラーメンというチープな食事でセーブしておいて来るべきクライマックスに備えるのよね。
まあ美味いもんを喰うからと言ってカンペキなハラペコにしてしまうのはたいていガツガツ喰いの誘因となって本来の美味さを吸収できない恐れもあるしね、夕食時にそこそこ空腹みたいな状況にコントロールしておく必要もあるのだ。
それにしてもこの“穂先メンマ”とネギだけのシンプルな「マルちゃんハイラーメン」ってのはめっちゃ美味いねえ…ってここでコレについて語ると脱線なのでそれはまた後日。
さあ肝心の『毛ガニ』である。茹で上げ未冷凍なので開封してそのままスグに実食態勢に突入できるところが有難い。ビールや日本酒の準備ももどかしく早速バラしにかかるのだ。

しかし開封して毛ガニに触れてみたときから思っていたのだけれど、こいつには磯臭さとか海鮮特有の匂いみたいなものが全く無い。そこにあるのは甘い潮の香り、蒸した甲殻類だけが持つうっとりするほど悩ましいもの、そう若い女陰のようなエロティックでむしゃぶりつきたくなるような匂いが漂ってくるのである。
脚を根元から全て折り取り、ハカマを開きつつ指にチカラを入れると甲羅はガバッと外れる。そこでねっとり芳醇な味噌とのご対面となるわけね。本当は一番最後に取っておきたいんだけど目先の欲望に負けてそれをつい箸で少々掬ってしまうのよ。舌先に運ぶほんの少量のカニ味噌…たったこれだけなのにいったい何なの⁉ってくらい凝縮された海の滋味。あぁ〜ん、スゴいっ!まるで挿入した瞬間に絶頂歓喜の艶声を漏らす熟女のように反応してしまう。いけない、いけない…このステップはもう少し後にしよう。


Nippon Kogaku  NIKKOR-S Auto 2/50  @ SONY α7

カニ味噌は言わずもがなであるけれど、身肉もムッチリと大入りでパンパンである。『毛ガニ』として最上の状態であることは間違いない。
“まかない用”だけに一部の脚やツメが取れてなくなっていたり甲羅にキズもあったりはするけれど、お味のほうはいささかの遜色もなく、自宅でテメーが食す分には全く問題なしなのよ。

ぷりぷりと弾力のあるムネ肉、ソフトでジューシーながらシャキッとした繊維質も併せ持つ脚肉、甲羅のウラ側に貼り付いているお豆腐のような食感の部位、味噌の下部に潜むコラーゲン状の脂…すべてが私のために尽される愛撫のように押し寄せてくる快楽だ。その甘み、その旨味、まったりと舌に絡みつく弾力、本能的に要求している塩分、そうしたものたちが混然一体となって我を忘れさせる。そしてオーラルとフィンガーを駆使して永遠にこの世界に溺れていたいけれど、ちまちまツマミ喰いをしながらでも甲羅には剥ぎ取った身肉が山盛りになってゆくのだな。そして横にとっておいた味噌を頂上に据えればクライマックスの御膳立てが出来上がるのである。
ここでいったん席を離れ、テーブルの上を整理する。散らかった殻や肉片を片付け、手やクチを洗い、箸も新しいものに取り換え、甲羅盛りも新たな皿にのせ直す。冷酒でクチを清め、新たな気持ちでこの盛り上がった身肉をたっぷり捉えクチに運ぶのだ。ばっくりあぐあぐ…それまでの食味の阿鼻叫喚とカオスから今度は整然としたストリームとなって五感を覚醒してくるカニ肉に鳥肌がたつくらいの慟哭を覚える。

やられたぜ、こんなにファッティーな『毛ガニ』は生まれて初めてかもしれない、そぅまるで豊満なヲンナを抱いているような心地なのである。釧路でさんざんカニを食していたからね、その道に関してはそれなりにウルサいほうだと自負してはいるけれど、まさか静岡に戻ってからこんなスープリームな『毛ガニ』に出会うとは夢にも思わなかった。
いろいろな技術が発達して保存や流通のテクノロジーが支えてはくれているのだろうけれど、やはり根本は鮮度の高い良質なものを見出し、如何に美味しく調理加工して素早く届けるか…という信念や愛情がこの『毛ガニ』につながっているのではなかろうか。
そうしたプライドを真正面から受け止めるのも購入者の義務だと思うし、また自然の恵みに対する感謝の心がそのお返しになるのだよ、絶対にムダにしてはいけませんな。
だから翌日はこのカニの殻でダシをとって味噌汁にした。身肉は全て食べ尽したのでひとつも入っていなくて豆腐とネギだけの味噌汁だけど、その旨味と香りをゆったり大らかに湛えたお味は何物にも代え難いもになった。本当に存分に堪能しましたよ、ありがとうございました。


カネキタ北釧水産株式会社
https://www.hokusen.co.jp/




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五月雨も 心あらずと 梅雨の使者



Nikon  NIKKOR-N・C Auto 2.8/24  @ SONY α7

季節外れの大雨があがるともう紫陽花の花芽が準備されていた。雨にちょっと戸惑うボクをまるで「それは私たちの季節への誘導路だからね」と言いたげにほとんど気にかけていないかの様子だ。
今は涼風がさらさらと吹いてくるこの季節だけれど、この分だとあの鬱陶しく重たい大気は早くやってきそうな予感。こっちの準備は未だ出来ていないんですけどねえ。







元ルーさん
おはようございます!
毛ガニの旬ならこの地図ね、一目瞭然です(´▽`*)アハハ

北釧水産さんのホームページから拝借しました。これからはオホーツク海産ですね…旬が漁獲エリアによって異なることなど勉強になります。
むかし釧路では抱卵期のメスガニを密漁がバレないように脚だけにして売ってました。今じゃ考えられないですよね〜(´▽`*)アハハ