■ たまには手数の多いフレンチも
黒鯛のロティー
スーパーの魚屋さんで舞阪の黒鯛を売っておりました。遠州舞阪港は静岡県の最西部の漁港…要は浜名湖の入口に位置し、遠州灘から浜名湖の汽水域まで幅広い水産物をカバーする良港であります。
嬉しいものですよね、こうして " 旅のもの " ではない地元産の鮮魚がテに入るなんて。しかも体長50cm近く、重量は2kgはあろうかと思われる黒鯛が¥800ってめっちゃお買い得かと思います。これは「塩焼でキマリだぜ!」と即包んでいただきました。
むかし遊漁船での魚釣りによく行っていたころ「真鯛」狙いの船で「黒鯛」を釣ってしまったことがありました。まあ生息域が似たような傾向にあるこの二種の鯛ですからそーゆーことも大いにあるわけです。いちおー赤い魚体が目出度い魚として「真鯛」のほうが高値で取引されるのですが、食味は「黒鯛」のほうが上…って仰るヒトもおられるわけでして、その遊漁船の船長も「いいないいな~黒鯛。俺の釣った真鯛と替えてくんねえかなあ」(船長の釣り上げた真鯛は体長70~80cmほどもある大物でした)としきりにせがんできたくらいハマの人々には人気のある魚なのであります。
「黒鯛」の美味しさを知っているボクはもちろん丁寧にお断りして持ち帰りましたが、帰宅してその「黒鯛」を見た今は亡き父がひと言「黒鯛は塩焼が一番だ」と発言したことを今でも憶えております。港町である清水で生まれ育った父が言うことですから間違いないでしょう。身肉の香りや旨味はやはり塩焼から…とその時学びました。
それから30余年、ちょっとヨケーな知恵や技術を身につけてしまったボクはこうして " ロティー " などとフレンチの真似事をしてみるわけです。下ごしらえからガロニの準備、調理過程にも手数は多くかかりますが、テマヒマをかけただけ流石にフレンチっぽく美味しい料理になりました。オイルは使いますが(バターではありません)基本は塩焼に近いものなので「黒鯛」の美味しさを存分に引き出せたかな…と自負しております。
あぁ父にもこんな料理を食べさせてあげたかったなあ。