『ミックス玉とじ丼』の悦楽
鎌倉時代に道元によって著述された「正法眼蔵」は仏教の禅思想を説いた名著であるけれど、その弟子たちがまとめた「正法眼蔵随聞記」には道元の説いた言葉や問答が詳細に記録されていて「正法眼蔵」を理解するうえで大いに役立つ文献なのだな。
その随聞記の中に興味深い一節があって、臨済宗の開祖・栄西は檀家から寄進を受けた銅インゴット(仏像を建立するための素材)を、ある日食べることさえままならない貧しい家族に与えてしまったという話だ。弟子たちはその行為を不妄五戒を破るものだと非難したのだけれど、栄西はもっと柔軟性のある仏の教え(つまり仏像を作ることも富を分け与え平等に暮らすことも同じこと)として活かすべきだと考えたようだ…と道元が語ったという。
う〜む、サスガに偉人は懐が深い。ボクなんぞはせいぜい冷蔵庫の中の残り物をムダにせず活用することくらいしかチエが働かない。
Asahi Opt. Super-Multi-Coated Takumar 2.8/105 @ SONY α7
冷凍してあった「野菜かき揚」、賞味期限の切れかかった「カニカマ」と「ゴボウ天」…切れかかったじゃなくってカンペキに切れてるやつね、こいつらを安全に食すためにだしツユで煮る、そしてタマゴでとじて丼モノのタネにしてしまうのよ。思いっきりわしわし喰う。美味いじゃないか、こんなにイケるとは思わなかったぜ!
まあ考えてもみれば夫々の旨味が複雑にミックスされ単品種にはない反応が生まれているのですな。よく残り物には福があるなんて言うけれど、残り物って選択肢は皆無だし食中毒のリスクだってあるからね、正直言うと面白くないのよ。福なんてありゃしない、あるのはせめて美味しくいただくための工夫や苦悩だけ。でもねえ食材ってのは命をつなぐ尊いものなんですからね、購入してきた時はソレナリに期待されていたはずなんだから、もっと大切にしてあげなくてはいけませんな。まあ『ミックス玉とじ丼』じゃ精進料理にはなりませんけれど。