いくら丼  

 毎年秋も深まるコロに北海道より鮭が届く。世界自然遺産となった知床で漁業を営む二軒の親戚からの贈り物なのだが、必ず同梱されている「海の宝石」もキチョーな楽しみの一つである。



 いつも感心するのはその包装である。土産用とは違い華美な仕立てを施してあるワケではないのだが、サラシにつつんで木箱に入れてあるムカシながらの流儀なのだ。
キチンとした訳があるのは言うまでもない。余計な水分を吸収し外気との微妙な呼吸を促進するこの保存方法は、先人の知恵が生み出したワザでありイクラの鮮度を適正に保持してくれる。
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 少量の醤油と味醂を加えさっと和えておくと、イクラがそれらを吸ってプチプチの状態に変化する。醤油の効能か、甘味さえプラスされたイクラは炊きたての白いゴハンの上で文字通り宝石の輝きを放ち始める。
ゴハン+イクラだけでも充分に美味しいが、コレに海苔や柚子の糸切りなどが添えられるとまさに「無上のヨロコビ」となるのだ。
昨日までの暴飲暴食のコトも忘れ、ヨクボーのおもむくままにワシワシ食べるイクラ丼はいつもよりコメを多めに炊く準備を要求する。

 もう一つ不思議に思うコトは、この知床ウトロ町の親戚から送られてくる鮭の食味が非常に良いことなのだ。見た目もフツーだし特に脂がのっているワケでもない。そして塩分の多い少ないということだけではないような気がする。
特に一軒のモノは昔ながらの製法で仕上げられた堅い新巻鮭で、冷凍技術が発達した現在でもその需要が切れないらしい。コレは味の解らないヤツにはただショッパイだけのサカナだろうが、閉じ込められた旨みや香りが全く別物なのだ。
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 軽く塩ヌキをして焼きほぐしておけば冷蔵庫で1ケ月は余裕でもつ。いちいち焼く必要もなく、ゴハンにはもちろんお茶漬けには最高の相棒となる。
まるで鮭が生きていたトキのエネルギーが、そのまま凝縮されているかのようなチカラを感じるのだ。


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月明かりがシルエットを浮かびあがらせる
霞に浮かぶ満月が東の空を妖しく彩る


TAMRON A16 / Nikon D300
ISO200 F8 4sec.
2007.12.24. 17:34 @Mannohara-Fujinomiya