瀬戸内の春を呼ぶ『イカナゴのくぎ煮』

二月の下旬から始まる明石海峡イカナゴ漁、瀬戸内では春の風物詩としてすっかりお馴染みのものらしい。

成魚になるとカマスやサンマに似た体形で20cmほどまで成長し刺身や干物などかなり美味しいらしいが、ナゼか価格はアンダークラスをキープしているというまことにフシギなサカナくんなのだ。成魚に関しては生・加工品いずれもボクは一般市場では見たコトもない。
“おなまえ”は別名で小女子(こうなご)と云えば「あっ!アレね♪」と地方によって呼称はかなり違うようだが、イカナゴの漢字表記は“玉筋魚”でちょっとえっちなフンイキもある。
体長2〜3cmの稚魚(シンコ)は釜揚げにされたり、こうして“くぎ煮”となって家庭の食卓に上る。オトナのイカナゴは安いが小さい稚魚ほど値がつり上がってゆくというのも面白いではないか…と思っていたら、明石や淡路あたりの漁は三月の下旬で終了していた。どうやら既に大きくなってしまったからなのである。う〜む、ソノあたりがシラス漁と違うのね。
そしてこうした佃煮系のものはお惣菜テキに買ってくるものだとばかり思っていたら、阪神地区では各家庭で自家製するのがフツーらしい。醤油・みりん・砂糖・おろし生姜…といった調味料で炊きあげ、好みによっては粒山椒でアクセントを加えるなど庶民テキなものから高級珍味までいかようにも変身する強みがある。そう、珍味で思い出したが「くぎ煮」は神戸市長田区の(株)伍魚福さんの登録商標となっており、商業目的ではカッテに使用してはならないのよ。
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神戸の垂水あたりでは“いかなご祭り”なんてものも毎年盛大にジッコーされているようであり「クギ煮の発祥はココなんだもんねー」と威風堂々かつマジメにアピールしているのだ。
もう少し大きく成長して4〜5cmになったものはカマスゴと呼ばれ、やはり釜揚げにされては酢醤油や辛子酢味噌で食すというが、ジツに美味そうではないか。ナマが手に入るならタマゴでとじてドンブリにしてガツガツ喰ってしまうというのもキモチがよさそうだ。
暑からず寒からずのこの時期、縁側に腰をおろし庭でも眺めながらキュッと一杯…傍らにはカマスゴの釜揚げか。
いいねぇ〜