太刀魚のみりん干

早いもので神戸サミットから間もなく2カ月が経とうとしている。残念ながら今年はキャンプに参加できなかった友人のTさんが「四国に行った時に買ってきたもの」だと“太刀干”を届けてくれた。


ちょっと甘めの味醂醤油に白ゴマ…サバやイワシ・アジといった青魚ではお馴染みの“みりん干し”だが、太刀魚のソレを食すのは初めてのコトである。
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タチウオは暖海性の魚で日本近海でもたくさん漁獲され庶民にも親しみ深い魚だ。塩焼が王道だが刺身にすると淡白で旨味があるのにコリコリとした食感が堪らなく美味い。またムニエルにしたりするとほっくりとした白身と甘味のある脂がホカの魚にはない美味しさを持っていてコレもまた忘れられない味となる。
「とにかく鮮度の高いタチが食べたい」
と云う強い願望を満たすために何度か太刀魚釣りに出掛けたコトがあった。
神奈川県の三浦半島周りではタチ専門の遊漁船もあって早朝クルマを飛ばしては乗り込んで、薄明るくなる時刻にターゲットを合わせてはサーベルのように輝くタチを何本も釣り上げたものだ。鋭い歯による食いちぎりを防ぐために釣針の根元数cmはステンレスワイヤーを使用し、肉食習性を逆手にとって仕掛けにバッテリーライトなどを仕込んでは誘うワケであるが、天秤やライトに加えゴムクッションなど装備させた仕掛け一式はけっこーな投資が必要で「魚屋で買ってきた方が安いや」なのではあるが、釣りの楽しみはまたベツなのである。
ところがこの高価なシカケを海の藻屑と祭り去る不届き者がいるのだ。そう、あの憎っくきフグの仕業なのだな。サオを煽っては太刀魚の喰い気を誘う動作をしていると、それまでシカケや重りの抵抗を感じていたのにフッと軽くなってしまうのだ。
アレレ〜?と思い巻き上げると何の抵抗もない道糸だけがリールに巻きとられてゆき、その先は失望と憤怒の入り混じったフクザツなキモチで海面を見つめるコトになるのだ。「あ〜あ、数千円がパー」なのである。
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コゲないように軽く炙って食した。干してあるので縮んではいるものの、ナマの時は身も厚く大きな太刀魚だっただろうことはスグに判る。
柔らかくふんわりとした太刀干は噛みしめているとジンワリ旨味が溶け出てきてジツに美味い。ちょっと甘めなのはご愛敬で、同じ四国産のスダチをちょっと絞りかけたり、やはり高知産の茗荷などを相棒に食せばその甘さにも納得のゆくハナシなのである。
日本酒をちょっと避けているこのごろなので少々不満が残るが、ビールを合わせるのも悪くない。というか、こんな富良野VINTAGEなどという旨いビールならば文句の出ようがないのである。
あぁ、みなさん御馳走サマでした。



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June 07. 1997. @Rothenburg