信州蕎麦の本懐

初秋の信州・清里へ出かけた。革工房メリーマックさんにオーダーしてあったトートバッグを受け取る日が来たのだ。
「食事を何にするか」と云うのも旅の楽しみの一つであるが、今回も例の如く何も決めずに出発し現地で探ろうという算段だった。

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実はメリーマックさんで「どこか美味しい昼食のできるトコロ、ご存じですか?」とコチラから尋ねるつもりだったのだが、ご主人との会話の中で“蕎麦の旨い店がある”とのお話が出てきてしまったからには即喰いつきは必至なのである。
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清里からクルマでは30分程で着くだろうか、JR最高地点の野辺山より“みずがき山自然公園”方向へ走り信州峠を経て本谷川渓谷への入口にさしかかる位置にその店はあった。
登山宿『有井館(ありいかん)』である。
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注文を受けてから蕎麦を打ち、切りたてを茹でて出してくれた。
こんな旨い蕎麦は久しぶりだ。香り・甘味・旨み全てに長け、手打ち蕎麦の何たるやを遍く踏襲する「信州蕎麦の本懐」なのである。
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メリーマックさんのご主人は「ソバつゆは美味し○○○んだけど」という前置きで教えて下さったのだが、確かにそのトーリで思わず笑いながら食してしまった。
が、食べている途中から「もしかして…」という別の思いも浮かんだ。
ソレはこの蕎麦がこれだけの美点を発揮できるのは、このツユあってのことなのかしら…なのである。
魚介のダシはほとんど…というか何も効いていないし、甘味も極小。
醤油を水で薄めただけじゃん!みたいなツユであるのだが、ミョーに旨みも感じる。
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「もしかして…」は山菜や茸などを煮たダシ醤油を使っているのかな…
と云うコトなのだ。
その答えは感動と共に最後にやってきた。
“蕎麦湯”を猪口に注ぎ、一口含む。
「……」
樹齢六十年の桐の木の下で頂いた絶品の蕎麦。
あらためて信州の旨味をかみしめる。




季節の草花が美しい


天気の良い日は外のテーブルが
最高の場所だろう


真の贅沢とはこのことか


登山宿 手打ちそば・民宿有井館
〒408-0101
山梨県北杜市須玉町小尾8872-12
TEL : 0551-45-0455  FAX : 0551-45-0632



信州峠の手前にあった蕎麦畑
こんな美しい風景の広がる路を走ってゆく…
空腹も忘れて思わずクルマから降りてしまった


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