鯖へしこのフリカケ 

朝の連ドラ「ちりとてちん」で一躍有名になった若狭の鯖料理だが“へしこ”となると未だに食べたコトはおろか見たコトもないという方が多いのではないだろうか。

イバって云うコトでもないがボクもその一人で、もしかしたらデパ地下などに行けばあるのかもしれないがワザワザ“へしこ”のために向かうコトはしないだろうし、行ったとしても何かホカに目移りしてしまってすっかり忘れ去られた存在になり下がってしまうのがオチだろう。それくらい“へしこ”とはジミな食べ物なのだ。
イワシやフグなども利用され、どちらかと云えば関西で親しまれている食品のようであるが、北海道ではニシンのヌカ漬といったものもありソレもこの一種かもしれない。
強い塩分とヌカから生じる乳酸発酵のチカラを借りて魚の長期保存と旨みの増加を図った“へしこ”は独特のニオイのため敬遠されがちだと聞くが、ニオイならもっと強烈なヤツがいくらでもあるのでそのうちテに入れて試してみたい食品の一つでもある。
名前の由来は諸説あるが「魚」そのものを指すコトバとして南方諸島では「ヒシ」「フィシ」、ラテン原語でも「ピッシ」「ペシェ」などFishのルーツであるコトに間違いはなさそうだ。日本語(ヤマトコトバ)では魚を入れるカゴのことを「ヒシビク」と呼びココにもその潮流が及んでいる。ちなみにサカナの古語は“ウオ”である。
つまりコネクリまわした屁理屈テキ語源説ではなく、単純に「ひしッコ(=さかなっこ)」と呼んでいたモノが変遷していった…と見たほうが自然なのではないか、とボクは推測する。
さてリクツはもうよしにしてフリカケを楽しもう。焼きほぐした“へしこ”を粉末にしてフリカケに加工したこの食べ物はフツーのフリカケに比べて味と香りに深みやコクがあり、本当の意味で「オトナのふりかけ」と呼べるものだろう。炊きたてのゴハンに振りかけて食せば他のオカズは要らないよ♪ってなカンジなのだ。
福井のエロ将軍様から献上された鯖へしこのフリカケを食べながら、ついニンマリしてしまうのボクなのである。