夏も終わりね 石川小芋『きぬかつぎ』

ひとつ間違って記憶していたことがあった。サトイモの品種のひとつだと思っていた“衣かつぎ”は料理名だったのである。
平安貴族の女性が外出するときに顔を隠すために被った一重の小袖を“衣被(きぬかづき)”と言い、茹であがった里芋をその様子に見たてその名を付けた…という説が有力なのだ。

そのサトイモは山で採れる自然薯が山芋と呼ばれるのに対し人里近くで多く産出されるイモなので里芋なのだと云う。ではサツマイモやジャガイモだって一緒じゃん!なのであってオカシイヨと思うが、後者は比較テキ近世になってから伝えられたモノなのでそうした名は付かなかったのである。ってコトはムカシのニッポンにはネバリのあるイモしかなかった…ということになるのだろうか、まあいいや。
静岡県といえばお茶にミカンとワサビがパッと出てくる農産品だが、このサトイモもなかなかのもので全国第5位・粗生産額は23億円とワサビの売上に迫る勢いなのだ。
特に遠州地方で栽培されている“石川小芋”はその品質の良さから京阪神地方の高級料亭などで重用される高級ブランドだ。「石川小芋委員会」などという組織が非常に厳しい出荷基準で統制していて、そのブランド価値を徹底テキに高めているらしい。委員会に欠席したりする生産者は出荷停止処分されるほど厳格な組織と言うのもなんだか軍隊っぽくていいではないか。ソレくらい石川小芋に気合いを入れているというコトなのだろう。
これに関しても石川小芋という品種があるワケではなく“石川早生”という里芋の親玉…文字通り親玉だ…からでてきた小芋に、さらに出てきた孫芋をひとつひとつ丁寧に手で摘み取って出荷するというテマヒマかかったサトイモは高級ブランドの名に恥じない品質を誇っている。
よく洗い皮ごと蒸しあげたサトイモにぱらりと強めの粗塩を振りかけ、手でつまんではツルリとクチの前で剥きながら食す石川小芋の美味さは夏の終わりのシグナルなのだな。
朝夕の気温も若干落ちつき始めたこの時期、間もなく本格テキな出荷が始まる。




☆ キメが細かく滑らかな舌触り…やはり美味い♪
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