でらうみゃ~でかなわんわ(23)

いちどは喰いたい”名古屋めし”

其の四 創業明治三十五年 大須で続く伝統のお店「寶壽司」

かなり前のことだけどナゴヤのローカル民放番組でこのお店を知ったわけです。大須の商店街に在る…ってねえ、昨年末に大須観音へ参拝に行ってるんですよ…あらら、その時は元祖『台湾ラーメン』のお店なんぞで昼食を摂ったりしたんですよね、知っていたら絶対に行ったんだけどなあ…しかもその時に件のお店の前を通ってるわけですよ、ちょっと悔しいじゃありませんか。

その番組では先代から引継がれた現在のご主人アレコレとかお店のメニューの由緒など、詳細なインタビュー形式で紹介してましてね、ボクは「いつか絶対に行かなくては」と固くそして一途な決心をしたわけなのですな。
そして先日、某事由によって日曜休日ではないウィークデイに自由な時間を使える機会に恵まれまして「そうだ!コレを逃したら死んでも死に切れねえぜ」とばかりに再び大須の商店街に顔を出すエロおやぢなのだな。
昔から在る商店街なので当然駐車場なんてものは無く、大須観音近くのコインパーキングに停めるしか手立てはない。日曜日と違うのはそうしたコインパーキングでは平日のみのエコノミーなプライス設定になっていて、数時間停めても左程な出費とならないところが大いに助かるのよね。
昨年末のあの頃はドキドキドライブだった大須周辺も、今ではけっこー慣れてスムースに目的地に到達出来るようになったし、大須寶壽司さんも一発で見つけられたのね、こんな齢になっても進歩ってものもあるんだねえ。
そんなワケで少しばかり早く着き過ぎた大須商店街、寶壽司さんも未だ準備中で暖簾も出ていないのだ。まあ遅くなって混雑してからより遥かにマシってものですから、近所をプラプラして時間つぶしをするわけです。

その中でメに留まったものが「柳下水」、ヤナギゲスイではありませんよ「りゅうかすい」と読むそうです。尾張名古屋の三名水に数えられるもので、元々ココにあった清寿院という寺院の井戸なのね。将軍様のご上洛の際は飲用水として献上されたという名水だったらしく、清寿院は明治の廃仏毀釈で廃寺となったけれど、今でもその井戸だけは遺構として保存されているのだな。オサレな今どきカフェのガラス張りウインドウに囲まれてはいるけれど、こうしてしっかり管理保管されているところが文化財の多いナゴヤらしい処方箋かと思いますよ。

そうこうしているうちに寶壽司さんが開店となりました。ボクはポールポジションで入店したけれど、常に混みあう人気店らしいのでなるべくヒト様の迷惑にならないような席を確保するのです。もうアッという間に席が埋まってゆきますが、下町のお寿司屋さんらしくいいフンイキですねえ。

さあいよいよ注文です。ランチサービスというものがあって、ひとつは『取り合せ寿司』という握り5カンに稲荷や太巻きが桶に入ったもの、赤だし付きで¥670って随分なサービスプライスじゃないですか。もうひとつは『ちらし寿司』で同様に赤だし付きで¥720、これだってすんごくお値打ちのように思われます。しかも貧弱なものではなく寿司屋のプライドが感じられるリッパな内容なのね、これも先代の想いを引き継いだお料理なのであって拍手を差し上げたい。

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迷ったのは”隠れ名古屋めし”と呼ばれる『切寿司』があることです。押し寿司の上に玉子焼と煮穴子を乗せ煮詰甘ダレを塗ってあるものなんだけど、見た目は角切りにした押し寿司という感じかな。これはどうしても食してみたかったもののひとつなのですよ。けれども例のテレビ番組でご主人が語っていたもので「戦後の食糧難の時代に、先代が美味しい寿司をなんとか安く食べていただこうと工夫を重ねた」と云う『ちらし寿司』ですな、これがこのお店の伝統と精神なのでありまして、ボクはそうした歴史が刻み込まれた食べ物をいただいてみたい…てのが来店の動機でしたからね、ブレずに初志貫徹しようじゃありませんか!の念で『ちらし寿司』に決めました。そして運ばれてきた重箱のフタを取ったボクは目を見張りました。赤身の鮪・白身魚・海老・烏賊・煮穴子そして玉子焼…この内容はお値段を考えると驚くべきものがあります。

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MINOLTA  M-ROKKOR 2/40  @ SONY α7

甘ダレや”でんぶ”もたっぷり、スイートで強いお味なんだけど、なにかこう優しさみたいなものを感ずるというか、カラダにすんなりと入ってゆくお味なのですよ。しみじみと美味しいなあ…と思います。特別に高級な食材を使っているわけでもないし、逆に甘酢生姜ではなく”紅生姜”なんてイナタくて個性のある添え物があったりするのに、どーゆーワケかそれらが一体となって食す者を幸福感に導いて行くのだな。ジツに不思議な料理です。
今この駄文日記をしたためながら「また食べたい…」と切に思う。食べ盛りのヒトにはちょっと物足りないかも知れないけれど、この『ちらし寿司』の由縁を学び本質を知りしっとりと噛みしめれば心は満たされるはずだと思いますよ。いやいやいや、ゴタクはどっちでもよくってさ、とにかく美味しかったんだから!
次回は『切寿司』を…と思うけれど、果たしてこの出張期間中にできるのだろうか。


大須 寶壽司
愛知県名古屋市中区大須2-17-7(大須観音通商店街)
TEL=052-231-3811
ACT=11:30-15:00 / 17:00-21:00(日曜・祝日 及び28日は通し営業)
   木曜定休(祝日・18日・21日の場合は水曜日に振り替え)




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富士浅間神社

戦国時代に創建された”まちなか神社”

寶壽司さんの『ちらし寿司』に満足して少し大須界隈を歩いてみることにした。と言っても寶壽司さんを出てほんの僅かな距離に「富士浅間神社」があることに気が付いたのね。けれどもどうしてナゴヤ大須に「富士」なの?なんですなあ。

名古屋市教育委員会の説明によると「明応四年(1495年)に後土御門院(天皇)の勅令によって駿河の浅間神社より分霊を勧請し奉祀したと云う由緒が伝えられている。祭神は木花開耶姫命、そしてその他の神様を合祀し数社に祀られている。またこの神社の近くにあった那古野山古墳から出土した有蓋脚付壺が保管されている…」とある。
へえ~駿河浅間神社ねえ…ってボクの故郷じゃないか。天皇さまやナゴヤのおエライさんも駿河浅間神社には一目置いていたってことですかね、なんだかちょっと誇らしげではありませんか。

また大須商店街のホームページでは「現在の社殿は初代尾張藩主・徳川直義公のご内室・高原院によって建てられた。もともとは尾張三名水として名高い柳下水を有する清寿院の鎮守として建てられたが、明治の廃仏毀釈により清寿院は廃寺に…そしてこの富士浅間神社だけが残った」という経緯を知ったのですよ。
行ってみれば街なかの神社ですからね、そう大規模なものではありませんでしたが、誰しもがヒョイと参拝出来て常日ごろそうした祈りやお願いごとをする神社として親しまれてきた歴史があるのかと思うのですね。
なるほど、いい神社ではありませんか。そして渋い。
現在は各所随分と老朽化しているので補修・保持のための浄財を募っていて、そのタイムテーブルというか詳細な計画もしっかり成されているようなのでひと安心なのですよ。
でもこうした神社ってものは郊外や山村にあっても街なかであってもココロが洗われるようですな。時間が止まっているような感覚と言いますか、物理的には喧騒の中に居るはずなのにナゼか静けさに満たされたココロもちになるのですよね。
そしてどちら様かがきちんと管理され、その節目ごとに伝統行事を絶やさず継承されていることに敬意を表するわけであります。ITだハイテクだのとずいぶん進化の速度は加速しておりますが、こうして”守り続ける”文化も大切にしなくてはなりませんね。

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Ernst Leits  M-ROKKOR 4/90  @ SONY α7


境内社は珍しい…というか初めて拝見した「まねき稲荷」さんです。
お稲荷さんですから当然キツネ様なのですが、こちらは巷で有名な「招き猫」ならぬ「招き狐」ってビックリのコンコン様なのでした。ぜひその招きスタイルを確認したいと思ったのですが、あいにくソレは立ち入りの出来ない社の傍に鎮座されておりましてね、結局叶いませんでした…まあシカタないよね。

全国各地を探しても「まねき稲荷」というのはコチラだけではないでしょうか、巷ではパワースポット云々が持て囃されておりますが、そーゆーカテゴライズや意識の持ち方って好きになれませんね。
古来からある寺社やこうした信仰(市井の人々の祈りや願い)の歴史を無視しているような気がしてなりません。もっともっと自分の住んでいる地域或いは町の成り立ちや生活史を知れば、そんな付け焼刃テキなものなど不要な存在でしかないでしょう。
かく言うボクもコチラではヨソモノなのですが、駿河の國の浅間神社から…って由来を聞くに及んでは並々ならぬ親近感と因果を感じ取るものなのですよ。あぁ大須に来てよかった!大きくて有名な神社に参拝したり初詣をキメたりするのもいいけれど、町内会の守護神みたいな存在も決して等閑にしてはならないと思うのですね。

因みにこの駄文日記はマルちゃんの「赤いきつね」を食しながらタイプしています。本当は昨日アップしたかった記事ですが、思いのほか長文にならざるを得なくて書き終えることが出来ませんでした。
口惜しいので帰宅後スグに取り掛かったのです。いつもの夕食パターンですと食堂でダラダラ呑み喰いするので、それだと当然ヨッパ状態なのであって日記は書けません。またとっても疲れているので早朝執筆もムリでしょう…ってことは、宿舎に着いたらスグにPCに向かいキーボードを叩くしか手立てはないのですな。
然らばソレナリな準備と対応を…てなわけでビールとワインとフランスパンは用意して初めはバリバリ書いていたんてすけどね、そのうちハラも減ってくるは酒は足りないわ…で結局追加ドリンクのバーボンをグビグビ飲ってしまい、ヨッパ突入と同時に温かい麺類が食べたくなったから…という顛末です。それにしてもマルちゃんの製品ってナゴヤじゃあまり売ってないんですよね。ようやく見つけた「赤いきつね」なんだけど、なんだかいつも食している同製品と若干お味が違う気がします。ウワサですけど同じマルちゃんでも関東地区向けと関西地区向けが分別出荷されているようでありましてね、お味が違うと思ったのはそーゆーワケだったのかな…おっと脱線です。元へ。

まるでボクサー犬のような形相の狐さま、とっても怖いカオでボクを見送ってくれたのでありました。

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MINOLTA  M-ROKKOR 2.8/28  @ SONY α7


富士浅間神社
愛知県名古屋市中区大須2-17-35(大須観音通商店街)
TEL=052-231-3880