■ 松藻と桜鱒の鍋
鍋にサヨーナラ…ってね、昨今流行りのハイテク調理器具を導入したとか、使用料金が払えなくてガス供給ストップされたってハナシではありません。そう春もすっかり過ぎ去り間もなく初夏というこの季節、ほっこり温まる料理ってのもそろそろお終いかな…てなことですな。
それでも先日は燗の…違う!" 寒の戻り " って云うんですか、急に冷え込む日も続いたりしまして、仕舞いかけた鍋を再び引っぱり出してきてはその料理なんぞを楽しんだわけです。
キッカケは北国に暮らす知人が送ってくれた食材…ここ静岡ではお目にかかることのない珍味ですね、「松藻(まつも)」そして「桜鱒(サクラマス)」。どちらも東北や北海道で愛される地方色豊かな食材であります。
松藻は金魚の水槽によく入れてあるマツモではありません、レッキとした海藻でして生では褐色、加熱すると鮮やかなグリーンに変化します。食味食感はフノリに近いでしょうか、シャキッとしていて磯の香りも強く鍋や味噌汁だけでなく酢の物なんぞにも美味しいと聞きます。また乾燥させたもの(焼まつも)は海苔のように炙って食したり水戻しして食用にするそうです。
桜鱒(サクラマス)はご存知の通りサケと同様に海に下っては大きくなってまた川に戻って産卵する陸海循環型サケマス類であります。このサクラマス(本マス)が陸封されたものがヤマメです。桜の花が咲くこの時期に多く漁獲されるのでこの名がつきました。
柔らかく優しいお味の身肉でして、鍋にしていただくとホワホワの食感!これは美味しい。フライにしたらサイコーなんじゃない?なんて思っていたら送り主の知人はやっぱりそうやって食したそうです。いいなあ、地元で獲れるならボクもそうするよ。
鍋に残ったダシ汁で湯豆腐も食しました。美味かったなあ、しっかり珍味を堪能しましたよ。
■ たらちり
塩をしていない生タラはそうお安いものではありませんでした。寒い海域で漁獲される魚ですからね輸送コストやテマヒマを考えますとそれも当然のことです。
ところが今シーズンは例年の半値くらいでしょうか、やはり例の疫病蔓延で飲食店の需要が激減してしまっていることが原因かと思います。思わぬカタチで家庭料理派に恩恵がもたらされておりまして、不肖エロおやぢもソレを見逃したりはしないのであります。
ムニエルやフライそしてホイル包み焼なんて料理も生タラの美味しさを見事に提供してくれますけれど、ちょ~シンプルな『たらちり』って鍋料理も寒い季節の熱源として歓迎したいものですね。
昆布だしを張った鍋に入れるのはその生タラ切身とお豆腐だけ…柚子ポン酢醤油に薬味のネギ、決め手は新潟の " かんずり " という唐辛子の発酵調味料です。当家に於きましてはもう何十年も切らしたことのない調味料でしてね、辛いだけでなく旨味と香りをググっとプラスしてくれる必殺ワザなのであります。
あぁ美味いなあ『たらちり』、また来年ね。同じお値段じゃ会えないかも知れないけれど。