上澤寺お葉つき銀杏と『あんびん』

朝の地方ニュースでは紅葉の様子を流していた。富士山周辺では最盛期を迎えている所もあるようで「お天気も良好だし、なんかムズムズしてきちゃったよな」と出かけるコトにした。


昨日はおシゴトの都合で早く戻らなければならないのでそう遠くへは行けない。比較テキ短時間で往復できる富士山の絶景ポイントが鰍沢町にあるので、ソコを目指して行けば紅葉と富士山の両方を一度に楽しめるのではないか…と期待を込めて出かけたワケだ。
ところが行った先のエリアは紅葉には未だ早く、富士山も強いカスミにブロックされていてどのロケーションも最悪だったのである。
ダイヤモンド富士が見えるというポイントで、農家の軒先にある柿の木と一緒に写したこの一枚だけがマトモなフォトで「あ〜あ」だったのだな。


通りがかりのお店で饅頭など購入し、サッサと帰ろうと富士川街道を南下しているといつもの看板がメに入って来た。以前は“さかさ銀杏”と書かれていたものは最近新しくなって“お葉つき銀杏”となっている。
「いったいどんなモノなのだろう…」と気には掛っていたのだが、なかなか立ち寄る機会もなくずっとそのまま燻り続けていた一件なのだ。どうせハズしてしまった一日だ、ついでと言ってはシツレイかも知れないが拝見して行こうと決心したのである。
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法喜山上澤寺(ほうきざんじょうたくじ)は日蓮宗の寺でその縁起とこの銀杏の大樹とは深い因縁が伝えられている。詳細は寺のホームページを参照していただきたいが、とにかくこの銀杏は大きく樹高は37mで幹周6.8m、樹齢推定700年というオドロキのスペックなのである。


昭和4年に国指定の天然記念物に指定されていて、フツーの銀杏が空に向かって枝葉を伸ばしているのに対し、コレは下に向かって垂れ下がるように生えている。そうか“逆さ銀杏”の名はココから来てるんだ…
そして“お葉つき…”とはその実のつく場所が葉の上であるコトなのだそうだ。通常はサクランボのように実がなりボトボトと例の異臭を放ちつつ落下するその実が、なんと葉の上に結実すると云う変わりダネが天然記念物たる所以なのである。
一所懸命その姿を探したのだがどうしても見つからない。どうやら全ての実がそうなるワケではなく2割程度なのだと云うが、珍しいコトに違いはない。見つけられなかったのは多分低い場所のものはもう落ちてしまったか採られてしまって、残っているのは見えない高所にしかないからなのだろう。
そしてその実のタネ部分、つまり一般テキなギンナンも犬の牙のようなカタチをしている点も不思議な銀杏なのであった。境内に立て看板がしてあり“ギンナンが欲しいヒトは社務所に申し出て”と書かれていたので、図々しく貰ってくればよかったなぁ…などと今になって思い後悔しているのである。
法喜山上澤寺
http://www.eps4.comlink.ne.jp/~honkou/





珍しいモノを見せて頂いたと感心しながら上澤寺をアトにしたが、ソコから数百メートル南下するとまた「お葉付き銀杏」の看板があることを知っていたので、ソチラも見て行こうではないかと忙しくなってしまった。
その寺は日蓮宗の本国寺で、やはり同様な銀杏の巨樹が境内に聳え立っていた。上澤寺のものより若干小ぶりながらも堂々たる樹勢を誇り、幹周り5.3m・樹高25m樹齢700年のさかさ銀杏である。
コチラでもぜひ葉に上に実を結んでいる姿を確認したかったのだが、完全に熟したその実をボタボタと落としているのでオイソレとは近づけないのである。アタマの上にでも落とされた分にはもう想像もしたくない事態が発生してしまうので、ボクは遠くから「はぁ〜」と眺めてはお終いにしてしまった。
ウ〜ム、もっと早い時期に来て検証しなければならないのだ。
本国寺
http://www.town.minobu.lg.jp/kanko/midokoro.php?id=54





やれやれハズレはしたがけっこータメになったこともあった一日のラスト、お楽しみはこの饅頭なのである。
おバカなカーナビに誘導されてとんでもないイナカ道を進行中に『あんびん・まんじゅう』と書かれた看板を見つけた。通り過ぎてから瞬間テキに読み取ってしまったその“あんびん”がどうしても気になって仕方がなかったので、ギヤをバックに入れて強引に後退してその店まで戻った。交通量の少ないイナカならではの芸当だ。
その土地の特産品を農家が直接販売しているようなよくあるお店だ。入口にはヤサイや果物が並べられているが正面左の部屋にはガラスのショウケースが置かれ、手作りの油揚げ菓子やコロッケ・餅類と一緒にそのマンジュウが置かれていた。老人男性が一人店番をしている。
「あんびん、っていったいナニなんですか?」
とボクが訊くと、老人はニコニコしながら
「ほら、こうしてな、アンコをモチで包んでな、ビンタを張るみたいにパンパンってやるからなんだよ」
と両手を合わせて打つ仕草で説明してくれた。そうか、アンコをビンタするから“あんびん”なのか…
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プレーン、栗入り、トウモロコシ入り、ヨモギの四種類に小麦まんじゅうがセットになっていて¥600だ。単品も販売しているらしいが、この日はすでに売り切れてしまってこのセットパックが一つだけ残っていたのはラッキーだったのね。
叩いて成形するためか扁平なカタチのその餅菓子は小麦の香りのする素朴な食べ物だった。過度な甘さや香りもなく、どちらかと言えばポソポソした感じもするが、なんとも自然な味わいが嬉しい菓子なのである。
お葉つき銀杏の由縁をベンキョーしながら淡々と食した六郷町の伝統食品であった。


六郷特産品加工組合
http://www.yamanashi-kankou.jp/search/present_detail.html?id=42f40178-d6b8-490d-b39b-dfa4eff356a2&genre_select=801&area=4




☆“お葉つき銀杏”に“あんびん”、今回は珍品ばかりでしたね! ポチッとお願いします