■名古屋めしではないけれど
うなぎ丼@うな岸
そのお店は幹線道路から一本入った一般住宅地街の中にある。どうしてこんな場所に?というギモンはさておき、きっと知る人ぞ知る…昔からのご贔屓さんがこのお店を支えているのかと思うのね。
お店の外観はごくフツーの住宅並み、店内もテーブル席がいくつかと小上がりの卓がやはりいくつか…満席でも30人に届かない客席容量である。そんなお店に津島神社参拝のあとに立ち寄ってみた。
献立は『うなぎ丼』に『うな重』そして『長焼』(とその定食)の三種類が基本だ。名古屋めしの重鎮である『ひつまぶし』がないのはどうして?という2回目の疑問符登場なんだけど、まあそれはドッチでもいいか。
店内を見回すと地元TVやら有名芸能人などの色紙と共に、とっても素敵なイラストが額装されて飾られていた。こちらのお店とその前の通りを描いたもので、なんとも昭和チックな雰囲気が見事に表現されている。そしてその横にはご主人の言葉が一筆掲げられていて「私どもの店はこだわりをもち、みなさまのお顔を見てからうなぎをさばいております、活が一番…うな岸」とある。
そうだよなあ、鰻の蒲焼はこうでなくっちゃ。当たり前って言ってしまえばそれまでなんだけど、近年は矢鱈に時短とか即出しなどせっかちな要求をする客が増えているし、飲食業界も”早い安い”が美徳のような風潮があって(美味いは既に当たり前だから)落ち着きが無くなってきているからね、こうしたオトナのお店は逆に新鮮に感ずるのも確かかな。
気さくで親切な女将さんはオシボリとお茶と共に茹で枝豆をサービスで持ってきてくれた。活き鰻からの調理になるので少々待ち時間が長くなるのを少しでもキモチよく過ごしてもらおうというものなのだろうか、有難いではないか。そしてとても美味であった。
どれほどの時間を待ったかは憶えていないけれど、静岡と違い蒸し上げの工程が無い分だけ早かったような気がする。そう、鰻屋さんではとにかく待ちくたびれることを覚悟しているのだけれど、拍子抜けするくらいソレが無かったことだけ記憶している。
Canon Camera SERENAR 3.5/50(L39) @ SONY α7
鰻の蒲焼は静岡の一流店に劣らない逸品ですね、かな~り美味しい。しかもタレの甘辛加減や肝吸いも抜群で満足なひと品である。と云ってもあくまで関西式の焼き方なので、パリッとした表面とふんわりな中の身肉のコントラストを愉しむことになる。トロけるように柔らかで崩れそうになるのを必死にコントロールしながらクチに運ぶ静岡の鰻蒲焼とはベクトルが違う。
それは決して悪い意味ではなく同じステージでも全く別方向の美味さを持っている…という意味ですからね。
そしてオドロキは鰻蒲焼の一尾分を二段にして丼に盛りつけてあることだった。ガツンと喰らえば美味いんだけど、再びそこには二度目の快楽が待っていると思うと心踊るではないか。喰っても喰っても底の方から旨味パンチを繰り出してくるような感覚、あぁもう死んでもいいとさえ思えてくる。鰻好きにはたまりませんな。
初めての訪問だったので『うなぎ丼(上)』にしたけれど、これなら『うな重(極上)』にしてもよかったかな~と少し後悔。お値段も一般庶民派なので両方注文してイッキ喰いっていう荒業も可能だよね。
考えてもみれば愛知県は鹿児島県に次いで全国二位の養殖ウナギ出荷量を誇っているわけなのであって、四位の静岡の三倍以上の数字が残されている。やはり生産量が多い土地は料理もそのレベルが高いものなのですよ。今までは「美味い鰻蒲焼ならやっぱ静岡でしょ!」と公言して憚りはしなかったけれど、もうそうも言ってられないなあ…なんてみょ~な危機感さえ覚えたのも事実なのである。
◆うな岸
愛知県津島市中地町4丁目2?3
TEL=0567-26-3518
ACT=11:00-14:00 / 17:00-20:00 木曜定休