■ 甲州名物『ほうとう』
放蕩息子も身を正す旨さ
外食で何度かいただいてはおりますけれど、お家で作ったのは初めてと云う甲州名物『ほうとう』であります。どうして作らなかったの?と訊かれても返答に困るのでありまして、ただなんとな~く…なんてボソっと返すのが精いっぱいのところです。
エロおやぢの居住する市は山梨県に隣接する哀愁のイナカ町なのでスーパーに行けば必ず『ほうとう』が売っています。何度もいただくチャンスはあったのですが、まあ何時でも喰えるというハラがその遅延を生じさせていたのかも知れませんね。
その『ほうとう』という饂飩状麺類のナマエの由来は諸説ありますけれど、まあ一番ソレらしいと思えるのは奈良時代に遣唐使によって大陸から伝えられた「餺飩(はくたく)」なる小麦の麺で、次第に訛って『ほうとう』と呼ぶようになったと伝わっている説に信憑性を感じます。その他には武田信玄がナンチャラとかいろいろありますけれど、地元の名将を盛り上げるための後付け逸話のような気がしてなりません。
しかしよく考えてみますと甲州の厳しい自然や稲の耕作面積の少なさから、民衆の飢えを凌ぐための知恵でもあった料理でして、塩を加えずに打った麺、茹でずに打ち粉をしたまま煮込むスタイル、保存の利く根菜類が具材のメイン…といったジツにSDGs(このコトバ、成り立ちからしてマユツバで信用できませんしキライなんですけど)な食べ物なわけですね。
鍋に具材を入れて煮込み、麺と味噌を加えてくつくつと煮込めば出来上がり…あ~エネルギー消費は最小限だし洗い物も少なくて済むのね。それにダシツユは打ち粉が溶けてトロミがついているから、もうめっちゃ温まるんです。底冷えのする甲州ではジツに有用な冬季の食べ物であったに違いありません。
根菜類やキノコそしてあれば少々の畜肉と油揚げ…限りなく素朴で素材のお味が活きています。優しい味噌味と豊かな根菜の風味がじんわりココロを温めてくれますよ、あぁもっと早く作って食すべきだったなあ…などとハンセーしきりの放蕩息子であります。ええ、これまでどんだけムダでカッテな生活をしてきたか、この料理をよ~く噛みしめて身を正しなさい。ってねえ、もう遅い気がしますけど。