ワケもなく『ビーフシチュウ』 

まんさいかんでは農産物だけでなく小さなコーナーではあるものの畜産物も扱っている。志太・大井川地区の畜産業者が質のよい肉を持ち込んでいるのでワカル人にとっては嬉しいコーナーなのだ。

そのためか冷蔵ストッカーが空っぽに近くなっているコトもあり「結構な人気があるものなんだなぁ」と口惜しさよりも安心安全を求める方が多いコトに感心してしまう。
先日はそのコーナーに“和牛スネ肉”がパックされたものがあり、ボクはすぐさま「ビーフシチュウが喰いたいっ!」となってしまったワケなのね。
誰かの誕生日などお祝いゴトのために決意したのではなく、ただワケもなく食べたくなってしまったビーフシチュウではあるが「ヤルなら本格テキにやろうではないか」と三日かけて仕込んだ気合いの一品だ。
特にウラワザといったものは使わずフツーに調理しただけとは云え、かなりのテマヒマはかかっている。何時間もコトコトと野菜を入れたスープで煮込んでは寝かすという作業を繰り返し、肉塊を除きほとんどのモノが溶けてカタチを失うまでになる。其の後に肉は取り出してスープを丁寧に裏濾しし、市販の缶入りデミグラスソースの希釈用に用いる。
その中に肉を戻しては焦がさぬように煮詰め溶け出た旨みを肉に再び注入する作業は、出来上がりの美味しさを想像すれば何の苦にもならないワケなのね。

ソースに美しいテリが出始めたら完成は近い。ちょっとナメてみて塩加減や風味を確認し不足を補ってやる。 
昨晩はまんさいかんでテに入れた旬の野菜を添えて春を待つ風情を表現してみた。アスパラ菜の苦みや砂糖サヤの甘みがトロリホロホロになったスネ肉をアシストして心躍る一皿になったし、合間にカジるラディッシュが濃厚なソースでネロネロになってしまった舌をピリリと矯正してくれる。
バラ肉やロースを調理したビーフシチュウもそれぞれの個性を光らせて美味しいものだが、このスネ肉には格別の旨みがあり煮込み料理には最適と言われる所以がある。適度に含んだ脂肪と濃厚な味の赤身がバランスよく、ところどころにあるゼラチン質がネットリと絡みつく様はちょっとホカでは味わえない。
「レストランで注文したら一体おいくら?」などと無粋なコトは考えてはイケない。お家でジックリ味わうヨロコビをワインとともに…なんだな。


ドメーヌ・ド・ジュアレス 2002
Vdp d'Oc 赤・FB
カベルネ・ソーヴィニヨン100%


ストラクチャーの高い酸味と甘みがボリューム感をつくり、ファットではあるけれどもスピーディーなスパイシーさが料理への適合性を強くしているようだ
黒すぐりの香りに干し草や枯れ葉のような香りも漂い、バランスの非常によい仕上がりになっている
煮込み料理よりステーキの方がよかったかな〜なのだが、アフターも素晴らしいので満足な一本