ごめんねジャガイモ君『クリームシチュー』


ウカツだった。
食品庫の片隅でコイツがジッと出番を待っていてくれたのには救われた思いがあるものの、こんなになるまで放置してしまったミステイク。
本来は芽を出し陽光を浴びた若葉はスクスクと育って次世代の準備を始めるハズなのだが、段ボール箱のスキマからわずかに漏れる蛍光灯の明かりを求めてモヤシ状態で生きる術を探っていたに違いないジャガイモ君には、本当に申し訳ないキモチになってしまったのね。


 発芽のために本来蓄えておくべき栄養を小出しにしてしまったためか、ジャガ芋本体のほうはフワフワと柔らかい触感になりつつあり、一瞬「使えないかも…」という罪悪感に苛まれたが、なんとか食用にはなりそうだ。
こんな姿に貶めてしまったのは北海道・十勝で育った「北海こがね」というメイクイーン系の改良品種ジャガイモで、煮くずれしにくく適度な糖度を持つこの芋はシチューやフライドポテトには最適の特徴を持っている。
品種によっては加熱後に黒く色が変わりやすいモノもあるがコレは明るい黄金色がそのまま保たれているので非常に使いやすい。サラダなどに用いるのにも向いているようだったが、こうなってしまってはいささかムリなのね。
 汁料理にジャガイモを加えるトキには最初から入れてしまう方法もあるが、でんぷん質が溶け出て汁にヨケーな粘りが出たり、最悪煮くずれしてスープが濁ってしまうなどの失敗を避けるために、ボクはいったん蒸してから加えるコトにしている。
シチューが完成に近づいてきたらそのジャガイモをそっと加え、静かにスープの旨みをシミ込ませてやると見た目にもキレイで美味しい料理が出来上がるシクミだ。
クリームシチューは鶏肉が非常によくあうが、この日はダブリ購入で在庫過剰になってしまったソーセージを使った。スモークの香りが若干クリームシチューとの間に摩擦を生じかけてはいるものの、けっこー美味しいのよ。
ソレにしても「こんなになるまでごめんね、ジャガイモ君…」なのだ。