灰干さんまの開き


朝からクラ〜い空模様である。雲が厚く霧雨のような細かい雨粒がシトシト落ちてきてはアンテナに雨滴を形成している。
終盤に差し掛かった梅雨だが気温はそう高くはない。しかし湿度はやはりソレらしい数値で冷たい麺類などについ気を許してしまいがちなのは戒めるべきコトであろう。
こんな時こそ温かい食事でカラダの保全に努めなければあと数か月続く暑い季節を乗り越えるコトは出来ない…などとエラソーな理由ではなく、ただ単に美味そうだったからと云う安易な決定を下した夕食献立だ。

夏から秋にかけて漁獲されるサンマは脂ものっていて文句なしに旨いものだが、この“灰干しさんま”も年間を通じて楽しめる食材だ。
さんまを開いて内臓や血合いを取り除き、洗浄・塩水漬込みの後に火山灰をまんべんなく敷いたセロファンで巻いて冷暗室で乾燥させる…というヒジョーに手間のかかる工程を必要とする加工品なのである。全ての工程が終了するまでは12時間程度かかるので大量生産には不向きと言われ、当然その分お値段もソレナリに上積みしたものとなる。
安くて新鮮なサンマをわざわざそんな…と云う考えもあるが、コレは適度な塩分と干物独特の旨み凝縮効果もあって、またベツの食品として大変に美味しい料理となる。
焼かずにそのまま酢〆しても安全に食べるコトができるというほど鮮度は保持されていて、酸化していない身肉が臭みの全くない干物として優秀さを誇っているのはやはり灰の抗酸化作用・消臭効果なのだろうか。
ただでさえロングライフな灰干し魚介類を冷凍技術がさらに支え、素晴らしい食文化として我々の食卓にのぼることを大切に後世に伝えて行かなければならない。