『ちたけそば』を食す遠征860km

「栃木県まで行って“ちたけ”を喰おうではないか!」というハナシは去年からの約束だったのである。早いものでもうアレから一年が過ぎようとしていて、先月梅成弟子丸氏より正式なオファーをいただき目出度く実施と相成ったワケなのだ。


ドタ参組も加わってメガーヌは5台。東北自動車道・宇都宮I.C.から日光経由で鬼怒川温泉を過ぎ南会津方向へ進んでゆくと“手打ち蕎麦”と書かれた看板や幟旗がやたらに多くなってゆく会津西街道なのである。
そうこの路は“そば街道”と呼ばれる蕎麦喰いの聖地なのだ。アテもなしに来たならば食事はドコにするのか必ず迷ってしまうだろうほど魅力テキな店が次々と現れ、もう少し近ければ何度か訪れてお気に入りの店の一つや二つ開拓してみたいものなのだな。


お目当てはもちろん“ちたけ”の入った蕎麦やうどんなのだが、お店の名前が「上三依きすげの郷」となっているだけあって敷地の中にリッパなキスゲが色鮮やかに咲いている。フツーはもっと小型で楚々とした花が特徴のキスゲなのだが、ココのものは毒々しいくらいに濃いオレンジ色をしていて言われなければ変ったユリだなぁくらいにしか思わないかもしれない。
途中で立ち寄った“たまり漬”の店屋で試食をした後にソフトクリームなんぞを少々ナメた程度だったので、とにかくハラが空いていた。相方とは冷たい蕎麦と温かい蕎麦を半分づつ食す無言の合意はすでになされていたので注文はスムースだ。さぁ、サッサと持って来い!なのである。

先ずはもりそばからだ。蕎麦そのものはマズマズに美味しいレベルだが、やはりと云うべきか“ちたけ”の威力は凄まじいものであった。だしツユの旨みが非常にブ厚いものであることは蕎麦湯で割ってみると更によく判ったのだ。割っても割っても旨みが希薄にならないのは他のダシ食材では考えにくいコトで、遠方からこのキノコを求めてたくさんのヒトが訪れるのも解るような気がする。


蕎麦つゆの中には“ちたけ”をはじめナスなどの野菜を炒めたモノが入っていて、独特のコクとトロミがある。ツユに油が浮いていたので最初は鶏ダシでも入っているのかと思っていたが、正体は炒め油だったのね。
あまり塩辛くない系のおツユなので蕎麦はザブリドップリ沈めて食してもその味を損なう事はない…と云うよりココの蕎麦の場合はその方が全体のバランスがよく取れるようなのだ。


温かい蕎麦には“ちたけ”に茄子と湯葉がたっぷり入っている。
だしツユを最初一口すすった時は、なんとも素朴な味わいと云おうかそれほど香りもなく「もしかしたらハズレ?」といった哀れな感情まで芽生えてしまった。いかにも山のキノコといった風情で、湿った下草やコケのような香りもしてくるし、ウッディで渋い香気が鼻孔を埋め尽くす。キノコそのものには味もなく舌触りもイマイチな感じだ。ただなんとも形容のし難い濃厚な旨みがだしツユに溶け出ていて、ソレにダマされ釣られてついつい啜り続けてしまう…といった状態か。
ところが食べ進むに従ってそうしたマイナス分子が気にならなくなるのがフシギなのだな。そして相変わらずコトバに形容し難い旨みがドロリと渦巻くように舌にまつわりついて来て、だんだんと止められなくなってきてしまうのである。
ウ〜ム、こんな種類の美味しさ体験は初めてのコトかも知れない。気がつくと噴き出してくるアセのことも忘れナリフリ構わずドンブリのツユは全て飲み干してしまっていた。


“ちたけ”は栃木の方言で、正式にはチチタケという名だ。身にキズをつけると乳白色の液体を滲ませるところからその名がつけられたようだ。前述のとおり歯ごたえ舌触りや香りよりも旨みを求められるキノコなので、汁もののダシ用や炒め物・揚げ物といった使われ方をされることが多いようである。
食事に満足してソトに出るとソレまでドンヨリだった空に青い部分も出来始めていた。気温は26℃程度とさほどでもないが、陽の当る場所はやはり暑く木陰に避難したくなる。


この日はどういう風のふきまわしかトンボが非常にたくさん発生飛来していた。並んだメガーヌのアンテナ1本1本の先端に一匹づつトンボが羽根休めをしている姿はナカナカに面白かったが、そうした姿を上手に写真にするのはまた難しいハナシでとりあえず個別に収めてゆくしかなかった。
やれピントが合わないだのと皆がワイワイと談義をしている時に同行者の奥様がトンボを指先に停めてみせるワザを披露してくれた。ソレを撮影するご主人の姿も微笑ましく、見ていたエロおやぢも久しぶりに純真なココロを蘇らせてみたりもするのだな。




上三依きすげの郷
http://www.kisugenosato.com/


地図







さてミもココロも満足して次に向かった先は福島県会津にある「道の駅たじま」だ。福島県と云っても先ほどの上三依は栃木県との県境なのでクルマで十分程度で着いてしまう。
建物に並んで設置されたテント売り場は“会津の野菜”特設市場で、採りたて新鮮な野菜や果物・加工品が安い値段で売られていた。
午後になって気温も急上昇してきたせいかヤタラにアセが流れムヤミにノドが渇く状態になっている。もしかしたら先ほど食した蕎麦ツユのせいもあるかもしれない。
同行者達が「美味い美味い!」と笑顔をこぼしていたのは氷水に浮かべたトマトで、ボクもムショーに食べたくなり購入した。1ケ¥50だ。ん〜♪冷たくていいネェ… やっぱり自然のものが一番だよ…と言いつつ調子が出てきたので“アスパラソフトクリーム”や“会津地鶏の焼き鳥”などといった観光客相手の商品にもついテを出してしまい、またノドが渇いては冷たい茶を買ってしまうというオバカ循環も発生してしまった。


漬物好きとしてはほとんどの商品にチェックは入れるが、ちょっと変わった漬物を見つけた。
“三五八漬”という胡瓜まるごと一本を使った漬物がやはり氷水で冷やされてタライに入れてある。初めて聞く名前だったので何と読むのか、どんな意味なのか店員のおねーさまに訊いてみた。
「サゴハチ漬って言ってね、原料の塩・米麹・蒸し米の配合の比率の事なのよ」とニコヤカかつ少々ナマって教えてくれた。この地方で昔から作られている独特の漬床なのだそうだ。胡瓜の他にも大根や茄子・蕪なども漬けるらしい。
早速一本購入してみたが、イイ感じの塩加減とナチュラルな発酵で美味しい漬物であった。もっと購入してくればヨカッタなぁと今になって思うが、まぁまた次回行くコトがあるなら…というお楽しみにしておこうではないか。
今が旬である福島の桃もテに入れて有意義な一日なのであった。帰りの事故渋滞がなければもっと素晴らしい旅だったろうとは思うが、まぁこんなものだろう。ソレよりこんなに素晴らしい一日に招待下さったメガニストの方々に感謝しなければ…














サッチさん
おはようございます! たまにはこんなお蕎麦もいいよねv(o^∀^o)v
多分あの地域だと“ちたけ”以外にもたくさんの種類のキノコがあるハズだから、ぜひ現地で旬のキノコ蕎麦を堪能してみたいですね♪ キノコは秋ってイメージが強いけど、ジツは梅雨明けからお盆のころまでが最盛期なんですよd(°-^*)⌒☆
エロおやぢはおケツモノ…違った〜、おツケモノにメがないんですー(笑)



梅成弟子丸さん
おはようございます! 疲れが今頃…(爆)今朝はネボーしてしまいました…ノ(´д`*)
いや〜楽しい一日でしたよ。ありがとうございましたm(__)m
見ましたよアレ!やっぱりチェックしてましたね〜(笑)サスガですー。チャッピ〜さんとも同じ話をしてまして「ココまで来てカツ丼ってーのも…」と笑っておりました。 しかし考えてもみれば山形から福島にかけてのエリアは昔からカツ丼といえばソースかつ丼だったようで、もしかしたら大アタリのお店なのかも…
今週末にまた日光に行くんでしょ? スグじゃん(爆)



dar-herさん
おはようございます! ミニたい焼に冷たい飲み物まで…ありがとうございました(^o^)/ 
“ちたけ”って想像していたより深いものでしたね、地元でこよなく愛される理由がわかったような気がします。我々は蕎麦しか食しませんでしたが、きっと彼の地では煮物や炒め物・揚げ物などたくさんの調理方法で楽しんでいるのでしょう。
チャンスがあれば古代村にも行って、もっとあの地域の食文化を探究してみたくなってますよ〜!



ムー吉どん
こんにちわっ! ジツは裏山、宝の山だったりしてさ〜(`∀´)☆
今回のツアーで唯一の失敗は“生チタケ”を確認してこなかったコトなのね…う〜んウカツであったのじゃノ(´д`*)
やっぱりね図鑑の写真からだけで判断するのはコワイので、実物を見たり触ったりニオイを嗅いでみたりっていう作業は必須なのよね〜



かぶちゃん
こんにちわっ! なんともイヤラシいキャプションの入った動画だねぇ(笑)
想像以上にポタポタ液が出てくるんだ…コレなら間違えるコトもなさそうだけど(^з^)-☆ あ〜でも本当に濃厚なダシが美味しい蕎麦ツユでしたね、チタケってこんなに凄いんだって思いました。
トンボの数の多さと乾燥チタケのキョーレツなニオイが印象に残る一日でした \(≧▽≦)丿



がんたさん
こんばんわっ! チチクリタケなら知ってたでしょ?\(≧▽≦)丿
オマケに二度コメ、毎度ありがとうございます(爆) 今日はお休みだったのですか?カツカレー喰いたかったのになぁ…
蕎麦のツユは冷たくもなく温かくもなく…といった具合でダシの旨みや蕎麦の香りを殺さないような仕様になっていました。ちょっと異色の体験をさせていただきましたね!
お上品な方のお口には合わないかも知れませんよ(笑)