たまには甘口『麻婆茄子』

麻婆豆腐なら中国山椒がパーンと効いた激辛がスキだ。ところが茄子となると甘口でもオッケーで、ゴハンに乗せて食すとまたいいカンジなのである。

東インドが原産の茄子は栄養価テキ見地からだと特に語るべき部分は少ないが、その特徴である紫紺色はナスニンと呼ばれるアントシアン系色素で、その強い抗酸化力がガンや生活習慣病の元凶となる活性酸素を抑制してくれる。またコレステロールの吸収を抑える作用もあるというコトで油と相性がいいと云うのは食味だけではなかったのだ。
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考えてみれば外食・中華料理屋で麻婆茄子を注文したことはない。弁当のオカズにちょこっと入っているものをつまんだ位で、ナゼか「お〜し、今日は麻婆茄子でガッツリ行くぜ〜!」とならないのだ。
コレはナスという食材のイメージが漬物や煮びたしといった柔らかな料理となって目の前に現れるケースが多いからなのだろう、少しナサケナイようなヒヨワさが“ハラに溜らない”という先入観念となって注文の矛先を他に向けさせてしまうのでは…と思うのね。
そして理由は解らないが“オンナの食い物”という印象もついて離れない。ベツに女性を蔑視するワケでもなく他意はないが、ナスにとってはヒジョーに不名誉なレッテルを貼られてしまったワケであって申し訳ないような気もする。
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麻婆ソースを吸った滑らかで柔らかい身肉は心地よく、ツルリとしたノド越しも充分な評価に値するだろう。こんなに強い味のソースなのにちゃんとナスなりの主張も捨ててはいない。
しかし麻婆豆腐に比べると季節限定テキ家庭料理といった風情がいつまでたっても二番手のポジションに据えられている原因であり、不当にその価値を低く見積もられている料理が麻婆茄子なのではないだろうか。




Sora

Afternonn, August 16. 2009.