かぐや姫の里の湧水群

製紙業が盛んな町として静岡県富士市は有名だが、原料・製品の輸送手段が確立していることと抄紙で大量に必要となる豊富な水資源というものが成立の条件となる。その点に於いて富士市田子の浦港東海道そして富士山の伏流水という好条件に恵まれ発展を遂げてきたワケだ。


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先日テレビ番組でその富士市の湧水群とそこに暮らす人々との生活を紹介していてなかなかに感銘を覚えた。旧い水路が街の中を走っていて大切に守られている。ただ単に景観保全をしているだけでなく、コドモの遊び場であったり生活用水として現在も利用されているとは思ってもみなかったので驚きもした。

暑さにたまらず涼を求め愛鷹山麓の渓谷を目指した帰路にちょうどそのエリアを通りかかり「はは〜ん、ココかぁ…」と立ち寄ってみた。
沼津市富士市を結ぶ根方街道はムカシの街道筋の面影を残していてクネクネ曲っている上、細くなったり広くなったりと非常にクルマでは走りづらいが、懐かしいような風情があって佳い。沼津方面に行った際の帰り道に時折利用していたので案内看板などをメにしていたハズだが、ぼんくらエロおやぢの興味を惹くことはなくただただ通り過ぎるだけであった。

案内標識に従って道すじに入ると間もなく大きな池のようなものが見えてきた。この池には特に名称は付けられていないようであるがコドモがバシャバシャと水遊びをしていて楽しそうなのである。無責任にコドモだけを遊ばせているワケではなくキチンと親がついて見守っている姿はジツに正しい行動なのだな。


この辺りの学校では地域の水源・湧水を机上の学習だけでなく実際の活動によって自然の環境と川を風水害から守る気持ちを育成させていると云う。
また学校だけでなく民間のNPOわき水田宿川委員会」というものがあって、年間計画に基づいて年6回以上の清掃活動が実施されている。
テレビ番組で観た“たらい流し川まつり”ではその委員の方が「川を愛し水を大切にする心を子どものころからカラダで憶えて欲しい…という気持ちで活動している」と仰っていて、この地域の子どもたちはずいぶんシアワセではないか!とカンドーなのだ。

そして清掃には小学校・中学校の生徒だけでなく地区外からも多くのボランティアが参加するなど、年間で延べ1,200人以上の人たちが活動に関与するという数字にも驚いたが、年々協力者が増えているというコトが素晴らしいではないか。
その他にも遊歩道の花壇などの日常的な維持管理・梅花藻の育成・鮎の放流など地域住民だけでなく企業や行政までもが協力しているというところも非常に印象深い。
美しい水辺景観の創出・維持はこうした努力が必要なのだ、と改めて思ったりもするのである。


  

今回ボクが歩いた“泉の里親水公園”の奥には医王寺という浄土宗・竜水山のお寺があって、その境内に水源があるようだ。
市指定文化財薬師如来像や竹田信玄の参謀として有名な山本勘助の慰霊碑も在るというお寺なのでゆっくりと参拝したいものだが、なにしろちょっと歩いただけで汗ダクの暑さである、ソレは涼しくなってからのお楽しみにしようではないか。

山門のすぐ南側からはとうとうと清水が流れ出て見ているだけでキモチが落ちつく。水量も相当なもので毎秒5リットル以上というデータだ。
サスガに湧水群というだけあってこの辺りには幾つもの水源が点在しているが、そのほとんどが寺社の境内あるいは脇にあってやはり水というものが霊験あらたかで大切なものであるということの表れなのだろうか。またそれだけこの地区に寺社仏閣が多い…ということにもなる。隣町に居住していながらそんなコトも知らずにいたのは本当に勉強不足であったしヨソモノの悲哀でもある。
その親水公園にはいくつかの水源から集まってきた清水が静かに流れ、大きな鯉がたくさん泳いでいる。ビオトープのような役割も果たしているらしくカモなどの渡り鳥もエサをついばむ姿が見られた。近所のヒトたちなのだろうか、コドモと一緒にコイにエサのパンを投げる様子などほのぼのとした光景に包まれた公園だ。

こうして富士山の雪解け水が何百年もかかってシミでてくることに昔のヒトたちも魅力を感じていたに違いない。
“ロマンと泉の郷”と銘打たれ歴史的な面影を残す姿はその真髄を知り尽くすにはかなりの時間を要することだろう。
非公開ながらワサビ田や池泉回遊式の禅宗風庭園を擁する古刹もあるので何度も通うことになりそうなボクである。

歩いていてキモチがよかったのはゴミやヨケーなモノが一切落ちていなかったことである。
住民がどれほどの心血を注いでこの街の景観を守っているかがよく判る。
当然のコトながら水路は清潔に保たれていてそのまま手で掬って飲んでも大丈夫ではないか、と思えるほど清冽な湧水が流れている。
そしてどの水路にもこうした“足場”があって、ムリな姿勢をとらなくても水にアクセス出来るようになっていた。ツルツルに光った石がいかにこの場所が永い間使われ続けてきたかを物語っている。そう言えばテレビ番組ではこの水でキュウリを冷やして食べていたなぁ…

わずか4〜5kmのエリアにこれだけの湧水があり水辺の公園がいくつも存在する。由緒ある寺社、古墳などその他の文化遺産が多数集まっている富士市の比奈・原田・江尾地区と言うのはスゴいところなんだなぁ…と調べれば調べるほど感心してしまう。
出来ればクルマなんぞで出向かずに東海道線吉原駅岳南鉄道に乗り換え、単線ローカル列車のショート・トリップを楽しみながら行ってみたいものだと思う。
ズボラなボクがクルマでたらたら流しただけでも様々なものがメについて随分と楽しい思いをさせてもらった。きっと鉄道周辺には昔ながらのお店があったり、タイムスリップしたような風景が見つかるに違いない。
欲張り食いしん坊のエロおやぢはレトロな食堂もチラリ見つけてはチェック済だ。次回の訪問時には昼めしもスケジュールに入れて…と、早く涼しくなってくれることばかり願っている。


泉の里親水公園
静岡県富士市比奈 医王寺前 MAP


富士湧水マップ
http://www.fuji-jc.or.jp/2003/fujiyuusui/index.html


名水大全静岡県
http://homepage1.nifty.com/agatashi/meisui/meisui_shizuoka.html



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  でも美味しい水は料理のキホンだからね…