老舗の足許にも及ばなかった『栗きんとん』

“栗きんとん”と云えば木曽飛騨路の名物、恵那のS屋さんや中津川のK上屋さんがちょっと有名な老舗であって、何度か知人からの頂きモノでその味覚を楽しんでいる。
ホックリしっとりした食感に甘い栗の香りが素晴らしい逸品であり、秋になると(早く送ってくれないかな〜)と心待ちにしているボクがいる。まぁ時期になれば名古屋が本拠地の某大手デパートの地下でも数量限定などとモッタイをつけて販売されるのではあるが、加工食品とは言えナマモノであることに違いはないし、本来持っている風味や旨味を堪能しようとするならば数量や販売期間が限られてもシカタのないことでもあるし、また知人から送られて来るのを待って食すという奥ゆかしさも人生に必要なのだな。

そんな日々を送る中、取材で行った富士宮市内の某神社(と明らかにしないのは後述するクリの出処を明らかにしたくないケチな考えからである)で大量に栗が実を落としているのを見つけてしまった。
この時期富士宮市内の各所では栗が一斉に実を落としていて、ソレこそ見つかり次第に誰もがソレを拾っていってしまうので、ボクなんぞがアトからヘコヘコ出かけていってもたいていはイガだけが虚しく散乱している状態でジツにイナカらしい風景でもある。
たまに大きくリッパな実も見つけたりはするが(ひとつふたつだけ持って帰ってもなぁ…)とアキラメの早いエロおやぢでもある。
ところがこの神社はちょっと奥まった場所にあり、また周囲を森に囲まれた渓流のような立地のせいか訪れるヒトもなく、リッパな栗は手つかずのままソコに大量に眠っていたワケなのである。
シメシメ♪ コレは思う存分クリ拾いがタダで出来るではないか。取材はサッサと切り上げ自らのヨクボーに走るいーかげんなオトコもいるものだ…と思ったりもするが、いや〜目の前のクリを喰わないのはオトコの恥という諺もあるのでコレでいいのだ。

神社の裏手は急な斜面になっていてその上に栗の木があるようだ。落ちた栗の実はその斜面を転がり比較的下まで落ちているのではあるが、通常ヒトが歩く場所までは到達しないので気付きにくいかもしれない。
どうしてボクがその存在を見つけたのかと云うと、神社から上にあがる石段に滔々と湧水が流れソコにキレイな栗の実をひとつ発見したからなのである。いやはや、喰い意地の張っているという例えはあまりよい意味で使われはしないが、こうした連想能力の増進にも貢献しているのだな。
この神社の境内は平成4年に富士宮市保存湧水池として指定され、面積は92.5平方メートル・水量が日量約480立方メートルと結構なものなのである。市域東部では数少ない湧水池で古くから農業用水などに利用されているといい、現在でもココを水源とした供給が周囲の農家に行われている。

先日のムカゴで気をよくしたボクはスーパーのレジ袋を畳んだものをやはりカバンに潜ませてあったので早速クリ拾いを始めた。まさか軍手やトングまでは装備していなかったので、ソコラに落ちていた木の枝を持って栗のイガから実をほじくり出す。
手だけは素手のままなので「イテテ!イテテ!」と小声をあげながらの作業だが、辺りにヒトは皆無なので恥もナニもなく順調に拾い集めた。イガの綺麗なものは数個そのまま袋に入れ、このブログのトップフォト・オータムバージョンとして活用させていただいた。

う〜む、結構な量が採れたではないか。家に帰って計量してみると2kg強あった。もっと拾う気になればまだまだ収穫量はあったのだが、まぁそんなに欲をかいてもシカタないじゃん…とヘンなところに清廉な感情を芽生えさせる変わり者でもある。
初めて食す場所の栗なので甘いのかそうでないのか、虫食いが多いのか香りがいいのかなど全く不明である。テストも兼ねていくつかを塩茹でにして食してみた。
よしよし、特にモンダイはない。フツーに甘くて香りもまずまずだ。やはり採りたてのものはナニして食しても美味いのである。半量ほどを茹でてスプーンですくっては食後のデザートに食した。とりあえず満足である。
さて、残りの半量をどうやって楽しもうか…と考えた。焼き栗にするのもいいし、グラッセにするのも後々お楽しみも多くていいなぁ♪と様々なレシピを思い浮かべたが、ふと思いついたのは「そうだ!あの“栗きんとん”を作ってみようではないか」なのである。
栗を蒸して粗く砕き、ソコに砂糖と少々の水だけを加えては練り、茶巾に絞っては冷し固める…といった工程を想像した。いつもは作り方など調べてから始めるのであるが今回は勢いでその方法で走ってしまった。
出来上がり早速試食だ。お〜美味い美味い! いや〜ナチュラルで適度な甘さとホックリしっとり…ってジツに素朴な菓子ではないか。思いのほか上手くいったが、やはり老舗の栗きんとんに比べると雑というか粗っぽいお味と云うべきか、ナニかが足りないのである。コレでは売り物などにはもちろんならない。
やはり老舗と呼ばれるお店のノウハウがあるのだろう、完成度は足許にも及ばない。歴史と技術か… トーシローのお遊びにしては上出来だとは思うけどね。




☆ また来年拾わせていただきます。ソレまでに栗きんとんのノウハウを…(笑)
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水路の秋



Afternoon, October 13. 2010.