秋漁シラスを味わう…田子の浦港水揚げ『生シラス』

イワシが漁獲される地域ならどこでもシラスは水揚げされているけれど、駿河湾奥で穫れるものは特に美味しいと言われる。海底地形やそこに流れ込む淡水の量や質など様々な要素が絡み合ってのことかと思うのよね。

でも悲しい哉、他の地域の生シラスを食したことのないエロおやぢなのである。だってスーパーでもデパ地下でも季節を問わずいつだって新鮮なそいつがテに入るという静岡県中東部に住んでいるんだからさ、なにもわざわざ他県にいった折にいつもよりお高いそいつを食す理由がないのである。
そうは言ってもテレビ番組で例えば湘南茅ヶ崎のシラスがイケてるなんてよく見聞きするからねぇ一度くらいそいつをバックリと食してみたいとは思ってはいるんだけど、やっぱりイザ行ってみれば静岡にないホカのお料理や素材のほうに心奪われてシラスのことなんざすっかり忘却の彼方ってーのがいつもなのよ。

近所のスーパーで売られている生シラスは概ね県内各漁港産を冷凍解凍したものであるがたま〜に朝獲れ生シラスなんぞも入荷することがあって、見つけたら即買い!が基本である。いくら冷凍技術が発達しているとは云え、やはり未冷凍の魚介類はお味が格段に違うのよ。う〜ん冷凍モノだってソレナリに美味しいんだけど、ステージが違うんだよね…と今やすっかりおクチが肥え肥え状態なのである。
シラス漁をしている県内各漁港とは沼津・田子の浦・由比・清水・用宗・大井川・舞阪…といったところか、たいていの港のものは食すチャンスに恵まれたけれど、たったひとつだけ未体験があったのよ、それが「田子の浦」。漁獲量がそう多くないので一般市場にはあまり出回らないし、ツイてなかったのはハタと思い立って田子の浦漁港まで出かけた日に限って海が荒れて休漁!なんてさ、日頃の行いはバッチリなはずなんだけど。
そんなワケでなかなかに縁のなかったそいつに先日出会ってしまったのだな、なんてラッキーなんでしょ。滅多に行くことのなかったスーパーの鮮魚コーナーにこの珍品を見つけた時は本当にコーフンした。そしてハンパな日本酒じゃ匕首(あいくち)に鍔(つば)だしねぇとけっこー張り込んだそいつを奢った、いいねぇ準備は万端だよ。
ひとくち食して満面の笑みである(だったと思う)。もう三十年以上の昔、用宗の漁師さんのところにシラスの取材に行った折にドンブリ山盛りの獲れたてシラスをごちそうになったけれど、あまりに美味しくてオカワリ下さいなんて図々しいことをしてしまった若造時代のエロおやぢがいた。その時のお味が忘れられなくて…もしかしたらボクはそれをベンチマークにしてシラスを今まで味わって来たのかも知れない。そして美味しいと思いつつどこかに引っかかるものを悶々と抱き続けていたんだろうね、なんだかスッキリと…そう、溜飲の下がる思いってこの事だったのか…とシアワセな晩酌タイムなのであった。



田子の浦漁業協同組合
http://tagonoura-gyokyo.jp/




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