■ いちどは喰いたい”名古屋めし”
其の弐 醸造の街で『みそにこみうどん』
朝早くから半田運河沿いをゆっくりと散策しその美しい景観をたっぷり楽しんだのだけれど、お昼まではまだ時間がある。ちょっと市内の社寺を巡ってみようか…とクルマを走らせた。
■■ 先ずは龍台院へ
知多四国八十八箇所の第二十番札所である。普通のお寺と違って山門などはなく、いきなり樹木とお地蔵さんに迎えられることになる。街なかとは云え住宅地のような区域の一角に在るのでとても静かだ。
Ernst Leitz Elmar 3.5/50 @ SONY α7
半田市内とその周辺には様々な由緒があったり重要な文化財が保存されている寺社が多くてどこに行こうか迷ってしまうけれど、限られた時間と行動範囲の中で例えそれがハンパなリサーチであってもエイヤ!で選んでは行ってみるしかないのよね。
この龍台院さんは歴史の重みがあったり由緒あるといった類の寺ではないけれど、流石に四国八十八箇所巡りの番所だけあって霊験あらたかなキモチにさせてくれる場所である。
紅い前掛けのお地蔵さんがズラリと鎮座する様子にメを奪われるけれど、その他にも観音様をはじめとした石仏・石像が数多く立ち並び、そして周囲の樹木との調和を強く感ずる。そして訪れたときは師走のド真ん中、ちょうど紅葉が美しい時節なのであった。
◆龍台院
愛知県半田市前崎東町35
TEL=0569-21-0994
■■ そして常楽寺
常楽寺は半田市内にある西山浄土宗の寺院、創建は文明十六年(1484年)。御本尊の「阿弥陀如来」は戦前の昭和六年に国宝に指定されているが、その他の宝物も数多く所有し、また徳川家康公縁の寺として様々な拝領品が今も残されている。
とても立派なお寺ではあるけれど、派手な歴史はないので地味と云ってしまえばそれまでのシブ~いお寺である。平素は静謐な時が過ぎ去ってゆく境内なのだろうけれど、この日は運悪く…おっと、こんなこと言ってはいけませんな…平和に子供たちの歓声は欠かせないですからね、つまりこの日はボーイスカウトのイベントが境内で行われていて、たいそう賑やかなものであったからなのね。
スカウトの子供たちの沸き立つ声を遠くに聞きながらゆっくりと境内を歩いた。なんだかバーベキューの匂いとかしてくるんだけど、そーゆー煩悩はムリして捨てながら努めて平静を装うテメーがカッコいいじゃないか。
そして御朱印をいただいているときにご住職の奥様らしき方が「普段はもっと静かなんですよ」と言われたのだが、いやいやそんなこと解ってますから。「まあこれも悪いものではありませんよ」と笑って返すオトナなのだ。
駐車場から境内に入ったので先に本堂を拝んでから山門へとむかうことになってしまったのだけれど、いや~それにしても超リッパな本堂内じゃありませんか。そりゃご本尊様は国の重要文化財だし「天龍山」の文字は家康公の御染筆ときたもんさ、スゴいなんてもんじゃないですよ。
そして山門の二天王は右に「増長天」…
Ernst Leitz Elmar 3.5/50 @ SONY α7
左に「広目天」…
Ernst Leitz Elmar 3.5/50 @ SONY α7
非常に荒々しいタッチの彫像なのだけれどそこがまた凄みがあって素晴らしい。いろいろ文献などを調べてみても、誰の作品なのかとうとう判らずじまい。もっとキチっと調べなおさないとね。
◆ 常楽寺
愛知県半田市東郷町2-41
TEL=0569-21-0268
■■ 古の赤レンガ
さてお昼ゴハンには未だ少し時間があるので半田市の歴史遺産である「半田赤レンガ建物」に向かうことにした。
”一流ブランドを目指した地方都市のビールメーカーは世界を夢見て巨大ビールメーカーに挑み、試行錯誤を重ねありったけの心意気を注ぎ込んだ激動の時代に打たれた偉大な事業家の夢。今ここにロマンとなり息づく”とは公式ホームページの冒頭の一節である。日本語としてかなりクドくて文章としての完成度は低いけれど、その心意気は伝わってくるものだ。
醸造業が盛んな愛知県の雄として「カブトビール」の製造工場をぜひ!と明治三十一年(1898年)に建設された赤レンガ造りの工場である。ニッポンの大手ビールメーカー(当時のサッポロ、キリン、エビス、アサヒ)に挑んだその勇気と覚悟が素晴らしいではないか。当然そうした「志」だけではなく財力や技術も伴っていなければ実現しないもの、それをやってのけたところが称賛に値する。
フォトは上が正面の姿なのだけれど、ボクは北側(ウラ手)の壁に歴史の重みを感じた。いいねえ、こーゆー遺産の姿。
Nikon Ai-S Zoom-NIKKOR 3.5/28-50 @ SONY α7
スーベニーのコーナーで復刻したカブトビールを購入する。レトロテイストな記念ビールグラスもカゴに入れてしまった。まあせっかく来たんですからね、たまにはこんな気まぐれもオッケーでしょ…てなワケでサスガにハラも空いてきました。
◆ 半田赤レンガ建物
https://handa-akarenga.jp/
愛知県半田市榎下町8番地
TEL=0569-24-7031
■■ いよいよ名古屋名物『味噌煮込みうどん』
龍台院に行ったり常楽寺へ走っているうちに電柱につけられた看板をいくつかメにした。その中に「手打ちうどん 岡田屋」というものがあって、お~っしソコならきっと『味噌煮込みうどん』もあるに違いないと思っていた。
初めての土地なのでちょっと怖かったしね、いちおースマホでネット検索して事前情報を探るとなかなかに評判も宜しいではないか。しかもお高くとまった高級店ではなくどちらかと云えば庶民派のお店ってのにも惹かれた。
行ってみるとごくフツーのうどん屋さんではあるが、入り口まわりはちょっと気の利いたディスプレイが施してある。よし、ここだ!何かカンみたいなものが働くのよね。
店内は古民家を意識したネオレトロ的なデザイン、しかしシュミとしてはそう悪くない。品書きは小さなPOP立てにあるものだけだ。いろいろあったけど目的の味噌煮込みうどんは並が¥850、上¥980となっていてその差¥130である。もうワケがわからないけれど勢いで「上」を注文した。
待つ間にキョロキョロと店内を見回すわけであるけれど、ちょっと印象テキだったのはパッチワーク作品がたくさん飾られていたことだ。けっこーな力作(のような気がする)がある。きっとその道の御方ならじっくり注目するのでしょうけれど、あいにくボクはそれほどでもないのでサラっとフォトにしてお終い。店員さんに訊いたら店主殿の奥様知人の作品とのことだった。
Ernst Leitz Elmar 3.5/50 @ SONY α7
程なくして供されたぐつぐつ鍋のフタを開けると濃密な湯気がもわっとあがった。おおっ、いい香りじゃん!ふつふつ弾ける沸騰泡が小憎らしいくらい食欲を震撼させる。
まるで火山の噴火口のような灼熱地獄からうどんをハシですくってはひとクチ…おおっ!おおっ!おおっ…美味いじゃん!紅白カマボコ、生タマゴ、笹切りの根深葱、そしてたっぷり入ったカシワ(中京地区では鶏肉をこう呼ぶ)。多分「並」と「上」の違いはその量かな、とにかくメいっぱいたくさん入っていて満足するのよ。
そして肝心のおつゆですねえ、三河特産の八丁味噌は当然なのでしょうけれど、その特徴的な風味とはウラハラに甘辛加減の塩梅が難しい調味をカンペキにこなしている。美味い!特有の”渋み”は程よく抑制され、塩分よりもマイルドな甘さを狙った味創りを感ずる。
とにかくめっちゃ美味いですね。これまで食したどの『味噌煮込みうどん』(岡田屋さんでは全て平仮名表記で『みそにこみうどん』となっている)より美味いと思う。
因みにハ丁味噌って岡崎なのでは?なのであるけれど、こちらのお店ではどんなブランドの八丁味噌を使用しているのだろうか…な~んて下衆な詮索は無用ですな、素直に、無心に、純粋に美味しいと思えばソレでいいじゃありませんか。
土鍋ぐつぐつのあっちっちなのでアセダラは必至、けれども美味過ぎて最後の一滴まで飲み尽くし吸い尽くしナメ尽しては御馳走さまでした~と相成りました。出来ればまたお伺いしてはコレを食してみたいものです。
◆煮込うどん 岡田屋
愛知県半田市星崎町3丁目39−82
TEL= 0569-21-7286