紅い叉焼

チャーシューメン@味正

表面を紅く染めた叉焼は横浜中華街などの特殊なお店を除き絶滅危惧種になっている。ボクが最後に食したのは未だ大学生だったころで、静岡市清水公園の近くにある中華料理屋さんでいただいたラーメンに入っていたのが最後かな、もう何十年も前のハナシとなるわけだ。
その時はベツに紅い叉焼にお目にかかりたいなんて意識がなかったものだから、不意に登場したそれに非常に驚くと同時に「あぁこんな懐かしいやつがあったっけ…」とコドモのころを思い出したりもしたのね。
特にお味が良くなるとかいうわけではないけれど、彩が鮮やかでラーメンの見た目が華やかに演出されるところがいいのである。以来そうした赤染め叉焼を使ったお店はないものかと気にかけていたのだけれど、ついぞお目にかかることはなかった。

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Canon Camera  CANON LENS FL 1.8/50(Type-1)  @ SONY α7

ところが今年の正月明け、なんだかごくフツーのラーメンが食べたくなってフラッと寄ってみたこのお店でそいつに遭遇したわけだ。カウンターに乗せられたチャーシューメンを見てボクは「ああっ!」と声をあげることはなかったけれど、ココロの中では「やったねっ!ばんざ~い」と歓声を発していたのだ。

お久しぶりです、あなたは未だ生き残っていたのですね。何がいいかって、こーゆー風に作られた叉焼は間違いなく古典的なレシピを踏襲したものに違いないのでありましてね、今どき流行の煮豚系チャーシューとは一線を画すわけなのですよ。
そのままだとパサつくようなイメージがあるけれど、こいつはラーメンのスープに浸っている間にしっとりと変化し、そしてサイドに蓄えたその脂がスープにコクを与え、また麺にも絡みついて旨味を増幅させるのだよ。表面に拡散してフタのような役割を果たし保温効果も出てくるってもんだ、いいねえ…まるで夢にみたようなチャーシューメンじゃないか。
見た目は昔ながら、しかし食してみても昔ながらのラーメンだ。奇を衒ったものは何一つない、ごくフツーの優しいお味がそっと拡がるスープに、少しだけ柔らかめで舌触りのよい麺が心地よいのよ。あぁ旨いなあ、暮や正月は美食に溺れていた反動かな、こんな庶民のお味がなんともステキに感じるのよね。
お店はやはり昭和の時代をそのままスリップさせたもの。カウンターにミニチュアの食品サンプルが置いてありちょっと笑えたけれど、その下にあるメニューPOPを見るとお値段も昔ながらのままなのだった。
きっと何回かは値上げをせざるを得なかったのだろうが、それにしても近年のしょーもない店のボッタクリ価格から考えると極めて良心的な設定だと言えるのではないか。
食し終えてホッとしていると、ご主人の奥様と思しき方がリンゴを剥いたものを差し出してくれた。ラーメン喰ったあとに甘くて香りのよい果物…なんて気が利いているのでしょう。こーゆーさりげないサービスが客の心を捉えて離さないのですね、いいお店です。とにかくミもココロも満足しました。




中華料理 味 正
静岡県富士市瓜島町90
TEL=0545-51-3412
ACT=11:00-14:00 / 17:00-21:00 水曜定休




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檀の紅葉

いつもは年末に撮影してたんですけどね
年が明けてもまだ鮮やかさをキープしていて…


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RICOH  XR RIKENON 1.4/50  @ SONY α7