■ 木の芽と茹でシラスの邂逅
不思議なもので世の中にはどうしても偶然とは思えない食材同士の出会いがあります。初夏なら初鰹と新玉葱、盛夏の頃ですと真鯒に獅子唐、秋には秋刀魚に青柚子、厳冬期の甘鯛に根深葱、そして直近の春には眼張と春牛蒡…海産物に山のものといった組み合わせばかりを列挙してしまいましたが、これらはほんの一例で数え上げればキリがありません…てなくらい奥深い食の世界であります。
いづれも素晴らしい出会いばかりでして、互いにその長所を高めあいながら新たな価値を積み上げてゆくお料理のお手本ですな、自然体でそういった生活が出来ればいいんだけど…と常々考えてはおりますけれど、なかなかに人生は思うようにゆかないものであります。
さて春の代表食材である「筍には木の芽」という定番カップルが存在するわけですけれども、そこを偏屈者といたしましてはちょいとヒネリみたいなものを加えて世に問うてみる…なんてことがしたくなってしまうのですな。
で、何年か前に思いついたのが『サンショベーゼ』という駄ジャレ系ネーミングのお料理でして、和食の組み合わせをイタリアンでゴリ押しするという、まあ言ってみれば " 新筍のパスタ・木の芽ソース風味 " みたいなものですね。これはハッキリ言って美味いです、春のナチュラル系パスタとしては出色の出来栄えで今年もソレにしようかと思ったくらいです。
ところがですねえ、先月某日に車検の CAPTUR 君を入庫した帰路に立ち寄った清水のスーパー、そこで購入した茹でシラス(今は " 釜揚げしらす " てのが一般名称)があまりに鮮度がよくて美味そうだったものですから、こいつは春のパスタ料理にズバリなんじゃないか…と生来の気紛れヨコヤリ思い付きテキトー無責任気質がムラムラと発露してしまいましてね、慌てて庭の山椒からその新芽をむしり取り、半量は細かく刻んでオイルソースに加え、半量は飾りトッピングに…といったひと皿に無理矢理仕立ててしまった『サンショベーゼ』です。
いや~こいつも相当に旨いのよ、ちょっとヤバくね?みたいな若者コトバに翻弄されつつも、新鮮で上質な茹でシラスがあれば筍レスでも充分勝負できますね…その春の香りと旨味に脳細胞を震わせるエロおやぢなのであります。
木の芽と茹でシラスの邂逅が生みだす晩春のマジック。