瀬戸内のちりめんじゃこ 


自然の生き物を捕えるワケなので、季節や地域によって大きさはもとより種類の違うイワシが用いられるコトになる。
しかも加工過程や保存方法の違いもあるので同じ“ちりめんじゃこ”とはいっても千差万別なのだ。もっともこの名称ですら関東と関西では異なり“シラス干し”というのが関東では一般テキなのね。
ボクはなんとなく「シラス=生または釜揚げ」というイメージが強いため関西風の言い方をするコトが多いが、語感からして“ちりめんじゃこ”のほうがかわいらしくもあり美味しそうな気持になるのだ。
ところでシラスがイワシの幼魚であるコトをご存じない方がいらっしゃるようで、最初はいいオトナが…とは思ったのだが、考えてもみれば居住地域によってはそうしたモノを常食しない地方もあるワケでムリもないのだ。よくカン違いしているのはシラウオまたはシロウオの幼魚だと思い込んでいるケースで、共に全く別の魚種でもあり根本テキにイワシとは食味も異なる。
また「シラス」そのものもイワシに特定する呼称ではなく、色素が少なく透明な状態にあるトキのさまざまな魚種の子魚を指すものであるというコトを覚えておくべきだろう。
やはり瀬戸内での漁獲・加工が多いようで、その他の地域では愛知・静岡・神奈川・千葉といった黒潮エリアの幸なのである。季節によってマイワシだったりカタクチイワシ、ウルメイワシと変化するが、微妙な食味の違いを検知するにはボクの能力を超えているようだ。
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ゴハンの一膳にコレがあると他のオカズは不要なくらい美味しい。近年はインドネシア産のシラス干しをよく見かけるが、特にマズいわけでもなくお値段のワリにはソコソコなのではある。
しかし友人が広島のご実家から取り寄せてくれたこの“ちりめんじゃこ”の上質さに触れてしまうと、名産地であるはずの静岡のシラス干しでさえちょっとカゲが薄く感じてしまうものなのだ。