豚バラ肉の蒲焼丼  

巷ではハロウィーンなどとウカレているが、今日は「ガス記念日」なのである。1872年(明治5年)に横浜・馬車道付近に十数本のガス燈が灯った日であり文明開化の象徴として人々のココロに刻み込まれたのだ。

食品の加熱方法はいろいろあるが、概ね薪や炭・ガス・電気と云ったところが身近な熱源だろう。肉や魚を焼いて食べる…と云えば真っ先に炭火を思い起こすように、一般テキには炭火が一番美味しく食べられる直火熱源として理解されている。
ネックは火力調節がやや難しいというコトでガスや電気に軍配が上がるが、炭火ならではの香りや遠赤外線効果を求めてコレに固執する方もいらっしゃるワケだ。
ところが科学的なデータを収集した場合、食品の焙焼後の焼き色や水分蒸発など物理的な性質に関しては炭火で加熱したものとガス・電気で同様なプロセスを経たものとの差異はほとんどない…という学会報告もある。
言いかえれば炭火でなくとも同じ調理ができるというコトになるのだろうが、どっこい料理とは工業製品とは違いそんな単純なモノではない。
炭素が直接燃焼する炭火は赤外線による輻射熱がその8割を占め、香ばしさを感じる成分であるピラジン類やピロール類が多いという特徴を持っている。
五感に訴える食べ物が出来上がるのはそうした部分があるからなのであり、電子レンジで加熱しただけの食品がなかなか美味しく感じられないのがそのワケを如実に物語っている。
もちろん昨晩のようなドンブリ料理であっても豚バラを炭火焼してやれば、こんなに濃厚なタレで調味せずとも最高の味を完成できるのだろうが、ガス火とフライパンでお手軽に楽しめると云うのは日課としての調理を考えるとハズせないものなのだ。
良くしたもので最近は後者のような調理方法であってもまるで炭火で焼き上げたような風味が再現できる調味料も販売されるようになり、ズボラ料理人にとってはこの上ない福音なのである。


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