山間の里で静かに茶席を

深夜のドタバタ忘年会で満足したはずなのにまだ呑み足りずにホテルの部屋で二次会を営む卑しきエロおやぢ…。休憩&昼めし抜きで連続12時間労働した後なのに結局就寝したのは午前三時半過ぎだった。
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目が覚めると八時を回っていた。こんな経験は何十年振りかもしれないくらいダラシない休日の朝である。
いけない…というより時間がもったいないではないか、急ぎ身辺を整えホテルの朝食会場に向かうのだ。
そのホテルの朝食ブッフェは楚々としているけれど集約された内容が充実していてとても気に入っている。

前回は別の某ホテル有名朝食バイキングで食い過ぎて昼めしにも影響が出てしまったのでこの日はセーブセーブと心して臨んだ。和食素材オンリーでチョイスしてハラ八分目を目指したのだけれども、生来が卑しいのかやっぱりデザートに目が眩んでつい喰ってしまった。でも美味いんだよね、休日のアサなんだからいいじゃないか…と言い訳。清潔で落ち着いていてサービス充実、ヒトには絶対教えたくないこのホテルはJR静岡駅からスグの好立地なんだけど毎回満足して出発できるのだな。
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さて喧騒と混乱の上に寒くて暗くてとっても辛かった昨日のシゴトを忘れるために静かな山間の里に向かってドライブだ。モクテキは特になかったのだけれど、安倍川上流部にある川根町と言えば静岡茶の名産地、道の駅もそのお茶をテーマにした「フォーレなかかわね茶茗館」なる施設があったのでふらりと立ち寄ってみた。
いわゆるフツーの道の駅なら先ずは土産物コーナーがど〜んとメインに座っているのだけれどココはちょっと違った。言い方は悪いけどなんだかガランとしていて素っ気ないのである。

それもそのはず、ここは川根町の茶業の振興を目的とした施設なのであって並みの観光客相手のスポットではないのよね。入り口に『お茶セット』¥300という案内があり、静岡市内からのドライブは二時間近くになっていたものだから同行者も(ノドも乾いたしちょっとお茶もいいよね)と注文するキモチになっていた。すると館長らしき女性が事務所から出てこられて「もっと素晴らしい特別なお茶のセットもありますよ」と教えてくれたのだ。なんでも1gで¥300もする超高級煎茶、全国茶品評会で上席入賞した品がいただけるというのだ、しかも¥500という破格のプライス!お願いしないテはないのだよ。

紅い毛氈が敷かれた茶室に通され庭を眺めながらその到着を待つ。静かだ。暖房を効かせ過ぎていないところも冷厳なフンイキで宜しい。
間もなく運ばれてきた黒の塗り盆は急須・湯冷まし・ポット・例の高級茶・小振りの湯呑み茶碗・椿の花をモチーフにした茶菓子・記念品が乗せられたものだった。

よりいっそう美味しく緑茶をいただくための作法をおねーさまがつきっきりで説明してくれる。一煎目…二煎目…三煎目…とそれぞれ明確に変化してゆくお茶の香りと風味を楽しみ、そして茶菓子をいただく最高のタイミングまで教えていただけるのよね。あぁいいお茶だ、これは素晴らしい。
ホントはその様子や淹れたお茶の色彩などもフォトにしたかったのだけれど、そんなことしていたらせっかくのお茶が不味くなってしまうし、一所懸命説明してくださっている方にシツレーではないか。メディアの取材じゃないんだからさ、こーゆーことはジブンが王様になって楽しまないとね…ってことでパス、ようやく急須に膨らみ蘇った茶葉をカメラに収めるのである。

シゴトのストレスもすっかり吹き飛ぶ典雅な時間を過ごしホールに戻ると「お茶の“手もみ”」が実演されていた。「どうぞ参加下さい、無料ですから」というお言葉に図々しく手もみ体験をさせていただくエロおやぢ。ところがカンタンだと思っていたこいつがけっこー難しいのよ、ベテランの老男性に何度も指導されてようやくそれらしき手つきが身についてきた。
現在はガスの火で加熱しているがムカシは炭火を熾してこの作業を行ったらしい。紙を敷いたスペースは結構な熱を帯びていて(なるほど〜、煎茶とは茶をこうして煎るからそう呼ぶのね)と今更ながら納得するのである。
蒸されてふわりと柔らかになった緑茶の生葉はこの台の中で何度も揉まれ方向を揃えられ、そして絶妙なチカラ加減で撚られることによって硬くツヤのある煎茶に変化してゆくのである、これは大変な作業だ。
普及品や中級品までは機械によってこの加工を行うが高級品は今だにこうした手法でしか得られないのだと云う、そうだよな…単に技術テキなことだけじゃなくって人間の掌の感覚と魂が美味しいお茶を生み出すんだろうな。それにしても結構な労力を伴うこの作業にすっかり小アセをかいてしまったエロおやぢである。
もうひとつ案内されたものはホールの一角に設置された影絵のコーナーである。表示と誘導があまり上手でなかったので気が付かなかったが、館長さんに促されて入ってみればこれまた素晴らしい影絵が展示されているのだった。

影絵作家の藤城清治さんの作品はこの川根に因んだもの5点が展示されていた。いや〜知らなかったなあ、美しい色彩やニッポン的な素材がベースになっているんだけど現代美術のような構成とプリミティブなライン、そしてミラーを効果的に使った展示方法など本当に素敵である。那須高原藤城清治美術館があるというから一度は訪れてみたいものだと思う。
そんなこんなで昼時を逸してしまいすっかり午後も遅い時刻になってしまったけれど、なかなかに充実した休日なのであった。


フォーレなかかわね茶茗
http://www.okuooi.gr.jp/wordpress/chameikan/
静岡県榛原郡川根本町水川71?1
TEL=0547-56-2100
ACT=09:30-16:30 水曜定休(祝日の翌日と12/29〜1/3は休館)


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キーンと冷たい空


7:11AM, December 23. 2014. @Fujinomiya-City