加賀太きゅうりの浅漬

去年の夏だったかビールのCMで一躍有名になった“加賀太きゅうり”はナカナカその姿を拝むコトができず、市内のスーパーで発見したのはかなりアトになってからのハナシだった。

もうその時は「冷やして丸カジリしよーぜ♪」などという季節はとうに通り越してしまっていたので購入はお見送りとなり、悔しさだけが年越ししていったのである。
今年もそろそろそんなシーズンに突入し始め「アレ喰ってみたいよな〜、ほらアレ…」とイヤラシく連続発言をしていたボクに、仕方無く家人が漬物屋で半割を購入してきてくれた浅漬なのだ。
店員は帰り際に「タネを取って食べちゃダメだからね!そのまま切ればいいんだから」と助言してくれたらしいが、そんなコトは言われなくても解ってるよ、ってトコか。確かにそう言いたくなるキモチも判らなくもない。もっと水っぽく大味かと思ったが意外にフツーの胡瓜に近いお味で、コレなら漬物にしなくても生を塩モミしてかじりついてもイケそーだなぁとは思ったのね。ただ皮は若干硬めで四方タテに皮むきして漬けてあるワケはそんな理由もあるのだろう。

美味しいことには違いないが漬汁の配合の加減か塩っ気が強く、味や風味も“満足”というレベルには達していなかったせいで「やっぱりジブンで漬けたほうが美味いにキマッテるさ〜!」とつい吠えてしまったボクはその責任を全うするハメになった。
加賀太きゅうりはテに入らないがサラダ用に購入してあったフツーの胡瓜があったので早速自家製浅漬けの製造を開始する。

コンブだしをひいて冷やしておく。粉末カツヲや塩・酒・輪切り鷹の爪などテキトーに加えて浅漬け液を作った。市販の浅漬けの素も不味くはないが、ソレだと買ってきた浅漬と同じ味がしてつまらないの一言に尽きるのよ。どーせ漬けるならやっぱりねぇ…の世界なのだな。
胡瓜本体は塩ズリして洗い流し表面に細かいスリットを入れてやる。いわゆる“蛇腹胡瓜”のテクニックだ。こうすることによって味のシミ込みも早くなるし、ハリハリしながらも柔らかくクチ当りの良い漬物に仕上がる。
ソコに加え盛りつけた時に緑色の濃淡がビミョーなストライプを形成して見た目にもジツに面白いものとなるワケだ。茹でアナゴの小鉢などに添えてやるには夏らしく涼味ある風情が生まれ、たいしたテマでもないのになにか料亭にでも行って出されたかのような一品となるヨロコビもある。
あまりに美味しく一人で一本くらいは楽勝に平らげてしまうので、露地ものが安く出回った折にはこうして消費してゆくのも家計の節約に一役かって出る一品となって都合がよろしいのではなかろうか。