(211) 誘蒲マダムの口福『いわしカレー』

東北の街々を呑みこんでゆく巨大津波の映像は誰しもを震撼させたと思うが、各地の沿岸に住む人々にとっては単なるニュース映像ではなく、いつ我が身に降りかかって来るかも知れないという恐怖を以ってその目に焼き付いているに違いない。
駿河湾の最奥に位置する蒲原町(現・静岡市清水区蒲原)もその一つで、過日の東北地方太平洋沖地震の際には避難勧告が発令された低海抜の地域である。古くから鰯や鯖の食品加工が盛んな所で、ぷらりと歩けばアチコチから海産物加工の匂いが漂ってくる東海道の宿場町だ。

蒲原は富士川の西に位置しているので中部電力のカバーエリアであって今回の計画停電の影響は受けない。昨日も関東各地で給電が停止されたが富士宮は一昨日の大地震の復旧作業という理由もあって対象区域から除外され終日いつものように生活が可能であったものの、サスガに今日は実施されるようだ。
予定時刻は夕方の6時20分から夜10時まで、まあこれ位は協力しなければならないだろう…とお気楽なコトを言っていられるのは一般人だけで、県東部・特に伊豆辺りの旅館や民宿など殆どが予約をキャンセルされ、かなり深刻な状態に陥っていると聞く。物テキ被害のない被災地から遠く離れた場所であっても停電による休業と云う二次的な被害が存在するのはあまり知られることのないマイナスだろう。
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さて、件の蒲原『いわしカレー』である。想像していたのは鰯の蒲焼カンヅメかオイルサーディンのようにゴロゴロっと魚肉が入っているものと思いきや、開封してみるとダラダラとルウだけが流れ出てくるレトルトパウチなのであった。そうコレはそーゆーカレーではなくイワシの削り粉からとった濃厚なダシを使って作るという蒲原伝統のモノなのである。
食して見ると「う〜むナルホド」なお味なのであって、特にスゴくてハマっちゃいました♪みたいなウキウキ感は皆無だ。とにかくイワシのダシ味と香りみたいなものがブンブンに発散されて、富士宮やきそばに必需品のあの“だし粉”をナメながら肉もナニも入っていないカレールウを食す…といったフンイキなのだな。コレはちょっと工夫をしないと大いにアピールするにはキツい内容かもしれない。いや、決して美味くないといった類のものではなく、家庭でフツーに食すには問題のないレベルのお味だ。しかしソコには購入価格というモンダイが介在してくるのであって、正直このカレーが1P¥500という高級レトルトカレーに属する価格帯に在るのは納得致しかねるのね。
有閑マダムの口福…などというとアラヌ想像でコーフンしてしまいそうになるが、パッケージのキャッチコピーには「誘蒲マダムの口福」とオヤジギャグ系のイタズラがしてあってヨケーに興褪めなキモチに陥る。

このお値段なら真空パックイワシ蒲焼の一つでも添付すればまだ贈答などの用途に購入してもいいかなあと思うが、現状で進めてゆくには厳しい現実が待っているだけだ。
以前に食した島根の『どんちっち鰈カレー』なんぞはちゃんと調理済みの高級鰈が丸ごと一尾添えられていて満足出来る内容だったぞ、原価の安いイワシならかなりな自由度があるハズだし、もう少し頑張れよ蒲原! 僅かな年月ではあったがかつて暮らしたことのある町だけに応援したいのよ、蒲原を。
歌川広重東海道五十三次で描いた雪の蒲原は、間もなく桜の季節を迎える。御殿山の桜はジツに見事、亡き父上がこの世で最後に見た桜でもある。



蒲原いわしカレー
http://iwasi-curry.jugem.jp/



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今朝の富士山



7:00AM, March 18. 2011. @Fujinomiya-City