トンボ鮪のヅケ『山かけ』はB級の星

世の中には注目を浴び続けるA級品があるけれど、誰だって常にそうしたものをテに入れられるとは限らなくて、仕方なく或いは故意にB級品をチョイスすることもあるのだよ。

“マグロの山かけ”という料理はブツ切にした鮪に山芋をすりおろしたものを合わせたものだけど、当然マグロと云えば本鮪(インドマグロまたはクロマグロ)がA級ね、そして山芋は自然薯がそれに当る。
どちらも高価なので平素の賄としてはそうそう採用するわけにはゆかないし、だいいち“マグロの山かけ”程度のものにはオーバークオリティーと云えなくもない。う〜ん、確かに美味しいのでしょうけどね。
ところがよくしたものでそのアンダークラスの食材が本領以上のものを発揮してくれることもあるのよ。今回は“手芋”と呼ばれるヤマイモの一種、大和芋みたいにズルズルダラダラではなく、自然薯に近い香りとネバリ・食感を兼ね備えているわりには庶民派価格のいいやつだ。
そしてマグロにはメバチやキハダといった予備軍がいるけれど、さらにその下にトンボマグロという下町の玉三郎みたいなやつがスタンバイしているのだな。トンボマグロってのはねえ胸鰭が大きく発達していて、泳ぐ姿が昆虫のトンボに似ているのでそう呼ばれるのよ。黒潮の流れる港町とその漁師さんのコトバだからね、一般テキにはビンナガマグロのほうが通りがいいかな。この名もやはり胸鰭を鬢(ビン=ヒゲのこと)に見立てそれが長いのでビンナガとなる。近年はビンチョウなどと誤った呼称を用いるバカが多くて本当に情けない。炭じゃないんだからさ、ちゃんと単語の由来とか語源の勉強をせんかいっ!と思う。あ…脱線ね、元へ。


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さてそのヤマイモはフツーにすりおろすだけなんだけど、豊富に脂がのっていながらもさっぱりとしていて身の柔らかいトンボマグロの角切りはちょっと工夫してより美味しく変身させるのだ。

いわゆるヅケってやつね、醤油に酒と味醂を加え、隠し味にアレをほんの少しだけプラスしたものにブツ切トンボを漬けたものだ。そうです、別にトンボじゃなくてキハダやメバチでもオッケーです。
こうすると身肉が少し締まってねっとりとした食感になる上に、マイルドな醤油風味がおろしたヤマイモに上手く馴染んでいいカンジなのである。あとは刻みネギにおろしワサビそして刻み海苔あるいはモミ海苔をあしらえばカンペキな『山かけ』ですな。いや〜美味いったらありゃしない。
食材としてはB級のもの同士なんだけど、こうして組み合わさるとフシギなパワーが生まれてA級食材にはないものが生まれているのだ。素晴らしいことですねえ、極上のお味がこんなにリーズナブルに楽しめるんですから…まさにB級の星ですな。
せっかくですからここは日本酒でしょ。地元の銘酒で乾杯です。




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またまたやっちゃいました
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都合のいいことに茹で玉子とカマボコもあって
よせばいいのに…と思いつつ煩悩ずるずる