北陸うまいもの『羽二重餅』 

福井のMから羽二重餅を頂いたのはコレで二度目だ。正直それまで一度も食べたコトはなかったので、初めて口にした時はほんのり優しい甘さとその滑らかな舌触りに驚いたものだ。

 軽くて柔らか、そして光沢のある布として珍重される羽二重は明治時代から生産が始まり、日本の殖産興業を支えてきた絹織物であり、福井県の代表的産品でもある。
和服の裏地としては最高級品で、その品質の確かさから欧米にも輸出され“HABUTAE SILK”と明確に区別されるほど高い評価を得ている製品なのだ。
 その羽二重の特徴とミゴトに一致する銘菓がこの羽二重餅で、口の中でふんわりとろけてゆくような食感は他に類を見ない餅菓子なのである。
餅粉を蒸して水飴などを加えて練り上げる製法で薄い布状に形成されているので、シンプルにそのままでもよいしナニかを包んで食べても面白い変化が生まれる。
ボクは前回プレーンな羽二重餅を楽しんだアトにクリームチーズやメロンといったモノを巻いて食べてみたが、甘さが低く抑えてあるので酒のつまみにもナカナカのものであったと記憶している。
 今回いただいたものは秋のこの時期ならではの菓子だろうか小豆餡と粒栗が予め挟んである羽二重餅で、はんなりとした味がなんとも落ち着きのある趣で、濃くいれた緑茶には申し分のない伴侶となっている。
 ところでこの羽二重餅にちょっと変わった新顔も登場しているようで、あの厄介者のエチゼンクラゲを粉末化して羽二重餅にしてしまおうと云う試みが成功し「えくらちゃん潮羽二重餅」として販売されている。
福井県立小浜水産高校食品工業科の課題研究の一環で同県の“大型クラゲ加工品開発支援事業”としての後押しを県水産課から受け、実用にこぎつけたのだと云う。
ただ漁業者にとっては労力とコストの割にはあまり…なクラゲ漁であるコトには変わりがなく、ホンネは別の所にあるようだ。
観光や産業PRの一環としては良いかもしれないが、嗜好品テキ要素の強い菓子に利用するよりカマボコやチクワなどの練製品への応用を追求したほうが消費量は確保されるのでは…とトーシローは考えるのね。
せっかくこんな素晴らしい餅菓子があるのだから、あまりイジらずに伝統の美味しさを守ってもらいたいものなのだ。