兵庫明石の真ダコと埼玉坂戸の生醤油

所用で行った清水の入船寿司本店さんから明石の真ダコを土産に頂いた。今年は豊漁で静岡の市場にまで珍しく回ってきたものだと云う。


中部以北で暮らしてきたのでこれまでは関西の食品に触れる機会も少なく、明石の真ダコも「コレだ!」といったモノは食したコトがなかったように思う。昨年神戸に行った際には明石までアシを延ばして名物の玉子焼を食してきたが、まぁタコそのものではないので「食べたことはあるぜ」と云う自慢話をするには少しムリがある。
思わぬ所でテに入れた明石の真ダコ、本当は寿司ネタにする上等な品なのだ。太さ大きさもジツに手頃なモノで握り寿司にして食せばさぞかし美味いだろうなぁと思いつつ、昼食に食べたトンカツが尾を引くハラにはやや厚めのスライスにして酒の肴にするのが精いっぱいの無精者だった。
蒸したのか茹でたのかは判らないが見事な火の通し加減で素晴らしい。どんなにいい素材であっても一歩間違えればサイテーのモノになり下がってしまう恐ろしさもあって、こうした食材を探し当ててくる寿司屋の御主人の目利きはサスガなのだな。


プリッとした皮の弾力と舌に絡みつくように触れてくるゼラチン質、何よりその身肉の滑らかさは驚異テキで今まで食したタコのドレとも違う食感が感動を呼び込む。もちろん旨みと香りは超一級品だ。
潮流の激しい明石海峡で育ったタコが美味しいコトはよく知られたハナシで誰もが承知している名産品だが、もう一つの名物として明石鯛もあり、まだまだ食してみなければならない食材は山積しているのね。
明石観光協会のホームページを見ていたら魚の棚と書いて“うおんだな”と呼ぶ商店街の紹介コーナーがあった。魚介類・海産物を扱うお店がズラリと並ぶストリート、さぞかしワクワクするに違いない。時間が許せばぜひ一度は訪れてみたい場所でもある。


せっかくの明石真ダコである、醤油もいいものを奢りたい。こんなトキのために大切に取っておいた醤油が一本あるのだ。
先月栃木まで遠征してちたけ蕎麦を食した折にdar-herさんから頂いた弓削田(ゆげた)醤油、「生揚げ(きあげ)」と呼ばれる粗濾過かつ火入れ殺菌していない完全ナマ醤油なのだ。
醤油が本来持っている発酵菌が生きているため冷蔵保管が必須という厄介なヤツだが、その分旨みと香りは作りたての醤油そのものでジツに美味しい。いわゆる関東の醤油の特徴をコレデモカといった具合に湛えていてビシッと来る辛さは関西の方々には馴染みにくいかもしれない。しかしコレはコレで素材の良さを引き立ててくれる要素もあって辛口醤油も捨て難い魅力があるのだ。
正直に云うと明石の真ダコにはちょっと合わないセレクトだったかも知れない。たぶん近隣地域の小豆島や紀州の醤油の方が優しい味でこのタコにはベストだったであろう。この弓削田生揚げ醤油にマッチする魚介ならばやはり江戸前あるいは関東近海の産物となるのか、せっかく美味しい醤油なのでぜひもっとこの良さを引き出せる食材を見出したいと思っている。


弓削田醤油株式会社
http://yugeta.com/

醤遊王国
http://yugeta.com/oukoku/





Sora

AM, August 16. 2009.