カニ違いしていた『てっぽう汁』

不燃物の回収日に備えてビンやカンの整理をしておこう、と分別してある袋を持ち上げるとナニやら重たい。空き缶の中から出てきたのは未開缶のカンヅメが2コ…カニの“てっぽう汁”だった。
どうやら家人が間違えて入れてしまったようだが「持てば重みで判るんだからさ、完全にイカレてるよな〜」とココロの中で叫んでは三割引シールが貼られた缶詰をしげしげと見つめてしまった。


てっきり“花咲ガニ”と思い込んで購入してきたその缶詰はよく見れば“タラバガニ”と書いてあるではないか。言い訳をさせてもらえば北海道釧路に住んでいたコロは『てっぽう汁』と云えば“花咲ガニ”を使うと決まっていて、タラバや毛ガニはあまり出番がないのである。
濃い味と身肉のしっかりしているのが身上の花咲ガニは当時の現地ではイマイチ人気が低めで、こうしてブツブツに切られて味噌汁の具にされてしまう運命を辿るモノも少なくなかったのね。ボクは花咲ガニならではのそんな強い風味もダイスキで、未だ味覚の発達していないガキの頃はどちらかと云えば毛ガニやタラバガニより喜んで食していたような記憶がある。
ところが何かのお祭りでその“花咲ガニの鉄砲汁”を初めてクチにした時は少なからぬショックを受けたものだ。
「こんな美味い汁は飲んだコトがない!」とすかさずオカワリをしたのは言うまでもない。甘みさえ感じる濃厚な旨みと海の滋養そして香り、花咲ガニからは素晴らしいダシが出るのである。

静岡に戻ってからはそんな『てっぽう汁』をいただくコトもなく過ごしていたワケだが、某SCの“北海道物産展”最終日に値引シールが貼付されたカンヅメを見つけて小躍りして2缶購入してきた。その後食品庫の片隅で出番を待っていた缶詰は、何の間違いか危うく捨てられてしまうところをこうして日の目を見たワケで、久々のカニ汁に「タラバだってけっこー美味いじゃん♪」なのである。
しかしイカレているのはボクもだよな…とんだ勘違いならぬ“カニ違い”に苦笑の夕食なのであった。



根室市花咲港

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